お笑い芸人としてバラエティ番組やお笑いライブなどで活躍する一方、ドラマの脚本や書籍の出版、役者など多方面で活動するバカリズム。2025年1月からは、自身が脚本を務める新ドラマ「ホットスポット」(日本テレビ系)の放送もスタートする。そこで本記事では、クリエイティブな才能を発揮し続けるバカリズムの経歴を振り返りつつ、彼が手掛けてきた作品からその才能と魅力について紐解いていく。
大喜利芸人から演者、脚本家と器用にこなすバカリズム
1995年にお笑い芸人としてのキャリアをスタートさせたバカリズム。最初はコンビで活動していたものの、2005年に相方の脱退によりピン芸人に転向。フリップネタ“トツギーノ”で観客の笑いをかっさらい、翌2006年には「R-1ぐらんぷり」決勝に進出した。独特なネタ構成や絶妙にシュールな演技力は話題を呼び、芸人としての“センス”を発揮していく。さらに機転を利かせた言葉選びや斬新な着眼点、ワードセンスを活かして“大喜利”のジャンルでも頭角を現し、「IPPONグランプリ」(フジテレビ系)では最多となる6回の優勝を果たした。
そんなバカリズムの才能はお笑いのみに留まらず、ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」(フジテレビ系)やシチュエーションコメディ「ウレロ☆未確認少女」(テレビ東京系)などへの出演が続き、俳優としてもその才能を発揮。当時、プロデューサーの豊福陽子氏はバカリズムの出演作やコントライブなどを鑑賞し、「“発想力がすごい方”という印象が強かっただけなのですが、自ら作・演出されているコントライブをいくつか見るうちに、書かれるコントの設定の面白さはもちろん、秀逸な会話劇――なかでも、会話がとてもリアルで生っぽいことに衝撃を受けました。ご本人さえ興味があれば、ドラマの脚本も書けるだろうな」と考えたそう。このこともきっかけとなり、豊福氏プロデュース、バカリズム初の連続ドラマ脚本作品となる「素敵な選TAXI」(フジテレビ系)が2014年に放送された。
日常系“あるある”で賞を総ナメにした大ヒットドラマ「ブラッシュアップライフ」
“人生の分岐点”をテーマとし、竹野内豊演じるタクシー運転手と、過去をやり直したい乗客がユーモラスな会話を繰り広げ、タイムトラベルによって導かれる人生の機微を描いた「素敵な選TAXI」。先述の豊福氏のコメント通り、登場人物のちょっとした会話に絶妙なユーモアが隠されているところにバカリズムらしさが感じられる。日常に溢れるコメディを土台に、SFのようなファンタジーな世界観を、バカリズムは職人的なセンスで余すところなく発揮した。
そんなバカリズムの“ちょっとした会話のセンス”が光った作品は、「東京ドラマアウォード2023」で作品賞(連続ドラマ部門)グランプリなど計28冠を獲得したドラマ「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ系)にも通ずるものがある。本作も“人生を何度もやり直す”というSF寄りのストーリーが話題になったが、注目された要素の一つは、登場人物たちの些細な“会話劇”だ。
例えばカラオケ店に遊びに来た主人公・麻美(安藤サクラ)に、バイトスタッフの幼馴染が好意でポテトをサービスしてくれたシーン。“気持ちは嬉しいけど、ドリンクをタダにしてくれる方が実際嬉しい”とこっそり耳打ちし、友人役のみーぽん(木南晴夏)、なっち(夏帆)が共感する。実力派を集めた俳優陣の演技力ももちろんあるが、何よりも脚本において不満をこぼすタイミングや言葉選びにリアリティがある。バカリズムの手腕により、思わず「あるある~」と呟いてしまうほど再現性が高いものに仕上がった。その他にも“シール交換での心理戦”や“学生時代の先生の愚痴”など、誰もが体験したようなイベントを随所に散りばめ、他愛ない日常会話でも視聴者を飽きさせない工夫がなされている。
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