コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、谷さんの『死ねなかった男ともうすぐ死ぬ男』を紹介する。作者の谷さんが、11月30日にX(旧Twitter)に投稿したところ、6.7万件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、谷さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
督促地獄で命を絶ったはずだったのに…
電話が鳴りやまず、督促状が散乱した部屋で、薬物を大量に摂取して自殺を試みる木島。「やっと死ねる…」「このアホみたいな世界ともオサラバ…だ…」というひとりごとを最後に意識が遠のいていく。
「静かだ…」「死ってこんなに…」と思っていると、「おい!」「おい!しっかりしろ!」「目を覚ませ!!」と大声が聞こえてくる。
目を開けると、軍服を着た佐久間に「貴様!言葉は分かるか?」「日本人だな、立て!!」と声を掛けられた。木島が体を起こすと、すぐ近くで爆発音が聞こえる。
「わぁぁぁぁぁぁ」と驚く木島に、「戦場でボーっとするな!」「付いてこい!」と言う佐久間。「夢?」「ドラマ撮影?」と混乱していたが、木島は走るしかなかった。
塹壕に着くと、佐久間は部下たちに「生きてらしたか」と声を掛けられる。そのやりとりをみて木島は「リアルすぎる…」「まさかタイムスリップ?」と混乱していた。
そんな木島に「誰だッ貴様」と銃口を突きつける佐久間の部下たち。スパイと疑われた上に、「こいつは兵隊ではありません」「こいつに貴重な場所も物資も与えるわけには」と言われてしまう。
しかし、佐久間は「兵隊でないなら、保護対象の民間人だ」「この男は生きて国へ帰す!」と木島をフォロー。木島は、佐久間に命を救われた。
木島は助けてくれたお礼を言いに佐久間に話しかける。そのついでに、木島が「いま何年の何月ですか…?」と佐久間に尋ねると、まさかの答えが帰ってきて…。
この漫画を読んだ人たちからは、「時代を超えた友情」「良い話」「心に刺さる」「力強い」「泣いた…」「自分に幸せにしてもらいます」など、多くのコメントが寄せられている。
創作のきっかけは「近代史を描きたい」という気持ち
――『死ねなかった男ともうすぐ死ぬ男』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
本作を描いたきっかけは、現在お世話になっている編集担当さんと、漫画賞レースに参加する話から始まりました。私が「今熱を上げている近代史を描きたい」と言ったところ、「その時代に生きるつよい人間と、悩みを抱えている現代人が出逢ったらおもしろいストーリーが生まれるのでは!?」といった話から、このタイムスリップものが生まれました。タイムスリップものはWEBコミックのトレンドとして根強く人気があると思っているので、本作はいろんな方にも読んでもらいやすいんじゃないかなと思います。
――佐久間との出会いを通じて、木島の顔つきが変わっていくのが非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
ありがとうございます!ひとって気分がドン底に落ちた時に、すべてが悲観的に見える(自分はそう)ことがあると思いますが、「もうこれだけしかない」と思うのか、「まだこれだけある」と思うのかでもう少し気張ってみようと思える力が変わってくるのかなって思っているので、そういうメッセージが伝えられればいいな~と思いました。あとは佐久間は性格もですが、顔つきも木島とは対照的な描き分けを意識しました。木島は細眉たれ目の二重ですが、佐久間は太眉つり目の一重です…。すべてが対照的な2人の掛け合いは描いていてとても楽しかったです!
――個人的に「自分に幸せにしてもらえ」という佐久間の言葉が心に響きました。谷さんが特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
「自分に幸せにしてもらえ」は、私も気に入っていますし、自身のスローガンでもあります。自分は自分の一番の味方になってやりたいと思っているので、この話を読んだ方の誰かがこの言葉を気に入ってくれたら良いなと思っています。他は佐久間の「生きることが難しいともいえる」も、一時は命を手放そうとした木島の考え方を否定しない台詞で好きです。
――本作のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
規律正しく、やり遂げると決めたことは必ず全うしようとする芯のある強いキャラクターが個人的に大好きで、昔からその傾向にあるキャラクターのファンでした。(「もののけ姫」のアシタカや、「永遠の0」の宮部久蔵、「ラストサムライ」氏尾などが大好きです)
「ああいう今時はなかなかいない堅気な男前がもっと見たい…!」の気持ちが強かったのと、そいういったキャラクターに現代らしい性格のキャラクターをぶつけるとどうなるか気になったので、そこからお話を考えていきました。
――作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?
制作当時は日本陸軍の服装や武器のディテールを勉強しながら描いて、あやふやに描きすぎてしまうことで意図しないところでファンタジー感が出ないように気を付けました。まだまだ全然甘いですが…。塹壕の背景は、資料が本当に少なく、あっても白黒写真なので難しかったです…。詳しい方々がお読みになられていたらお恥ずかしいです。
――今後の展望や目標をお教えください。
私は作中のことばを考えることが好きなので、今回の「死ねなかった男と~」の作中台詞「自分に幸せにしてもらえ」のように、どこかの誰かのこころにちょっとだけ刺さって、少しだけ誰かの背中を押せるようなお話を作りたいなと思っています!
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
読んでもらえるとこちらも嬉しいので、たくさん読んでくださいませ。いつもありがとうございます!