ドラマ「エルピス—希望、あるいは災い—」(2022年)が第60回ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞し、2024年1月期のドラマ「春になったら」は2024年民放連賞のドラマ部門最優秀賞、2024年4月期のドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」は東京ドラマアウォード優秀賞ほかを獲得するなど、目覚ましい躍進を遂げているカンテレドラマ。放送中の「モンスター」(毎週月曜夜10:00-10:54、カンテレ・フジテレビ系)も好評を博している。この度、WEBザテレビジョンでは「アンメット」を担当した米田孝プロデューサーと「春になったら」を担当した岡光寛子プロデューサーにインタビューを実施。作品への思いやドラマ作りの苦労、今後の展望を語ってもらった。
高評価につながったのは「カンテレドラマ班のチーム力の結晶」
――カンテレ制作ドラマの受賞が続く結果を受けて、率直な気持ちを教えてください。
米田:率直にうれしく、ありがたいなと思います。キャストもスタッフもみんなで心身を削って作っているので、作品を評価していただけるというのは全員が報われる思いがします。
岡光:去年度の「エルピス」から続いたことによって、カンテレドラマが総合的に評価してもらえたことを感じ大変光栄です。
米田:カンテレには、プロデューサーが自分たちなりの思いをある程度自由に表現させてもらえる環境があります。それがこういう形の評価に繋がったとしたら、カンテレドラマ班のチーム力の結晶なのではないかなと思います。
――カンテレではプロデューサー同士での交流も多いのでしょうか?
岡光:準キーで部員の数も多くありませんので、日常的に細かく情報交換をしたりしてますね。仲間であり、ライバルでもあるわけですけど、それぞれが上昇志向を持ちみんなで良くしていこうという意識が強いと思います。
米田:誰かの作品が放送開始されたら、LINEグループで感想が飛び交ったりしますし、例えば僕が「最近、おすすめ若手脚本家って誰かいませんか?」とポンとLINEグループに投げたら、岡光がたくさん情報くれたりしました。一人一人がカンテレドラマという一つのブランドを作っていこうという意識があるのだと思います。
岡光:チームリーダーの河西秀幸プロデューサーがカンテレは野武士集団だってよく言ってます(笑)。
――野武士集団、パワーを感じる言葉ですね。現在放送中の「モンスター」はカンテレで最年少である28歳の加藤春佳プロデューサーが制作されていますが、若手も挑戦できるような環境作りを感じられているでしょうか。
米田:年齢は問わないんじゃないかと。もちろん若手にもチャンスはありますし、仮にそれがベテランであっても、そのプロデューサーが作品を背負って表現をしていく環境があるというのはとてもいいことだと思います。
岡光:私もそう思います。いろんな部署を経験してからドラマプロデューサーになる人もいますし、それぞれ違うバックボーンがあるからこそ毛色の違う面白いドラマが生まれるのではないかと思います。
キャスティングに「衝撃」お互いの作品から刺激を受ける
――米田さんと岡光さんの作品づくりではお互いにどんな特徴があると思いますか?
岡光:特徴と言いますか、米田が初めてプロデューサーを務めた「僕たちがやりました」(2017年)で私は初めてAPをやりまして、2人とも初めてで要領得ないまま怒涛のように進んでいったのですが、米田の芯の部分の熱量や、人にも物語にも愛情を持って真摯に向き合う姿に感銘を受けました。一緒にやっていて、ドラマの制作過程が純粋に楽しかったんです。「アンメット」でも画面には映らないところでやっていることが、しっかりとドラマのクオリティに反映されていると感じていて、素晴らしいと思います。
米田:「春になったら」という作品に岡光の人柄や、そこに込められた思いを感じますね。それをああいう素敵な作品としてアウトプットできるのが岡光Pの素晴らしいところです。また、お父さんの役に木梨憲武さんをキャスティングしたというのが、もう素晴らしいのひと言で。その引き出しは自分にはないなと感じましたし、親子のお芝居をされてるシーンを見て、「岡光、やりよったな」と思いましたね(笑)。見ていて気持ちよくもあるし、自分も負けないように頑張らねば、と刺激ももらっています。
岡光:それで言うと、米田さんが「アンメット」に若葉竜也さんをキャスティングしたことも衝撃的で、ワクワクさせられました。どうなるんだろうという期待値は高かったですし、その期待を超えてきたので、評価につながったんだと思います。
米田:「カンテレドラマは攻めてる」みたいによく言ってもらうんですけど、物事の思考の手順として、「攻めよう」と思うところからスタートするのは危険だと思うんですよね。物語を作っていくモチベーションとして「攻める」っていうのは違うと思うんです。どうすれば1番ベストな形になるのか、どう表現したら面白いのか、ということを純粋に追求した結果できあがったものが、「攻めてるね」と言ってもらえるとうれしいです。