亮子の問い掛けに考えさせられる
幼いときのオセロゲーム対決、第5話・6話で描かれた弁護士としての法廷対決。いずれも粒来が一枚上手だったが、似た者親子が共闘するとなれば何倍もの力を発揮する。
帝東電機というモンスターを着実に追い詰めていった亮子と粒来。その様子に挟み込まれた天秤の映像。弁護士バッジには公正と平等を象徴する天秤が描かれているのだ。片方には重りが乗り不均衡だったが、もう片方に軽い羽が一本ずつ舞い落ちていくことで亮子たちの動き=弁護士としての信念を示した演出が面白い。
裁判に勝つつもりの真面目な杉浦に対して、「(裁判に)勝たなくちゃいけないの?」と言う亮子と、「いいんじゃない、勝てなくて」と言う粒来は、本当に根が同じなのだと感じる。先の天秤の映像が重りよりも無数の羽のほうが重くなって一気に傾いたとき、世間のイメージが一転した帝東電機は、サカミクリーンの従業員と村人たちに賠償金の支払いを申し出た。
企業の本当の姿をあぶり出し、正しい道へと導こうとした亮子たち。ただ、亮子(おそらく粒来も)は、その先を見ていた。
まったくといっていいほど今回の件を信じず、協力もしなかったのに、SNSなど世間で注目されたことで意見をひるがえした従業員や村人たち。賠償金を得られるとなったら、その額を引き上げようとした。すると亮子は「いくらもらえたら満足するんですか」「あればあるほど豊かな人生になる?」と問い掛けた。そして「幸せってなんですか」と。
亮子は裁判になった事件に潜む、人々の心の中にあるものにぐっと切り込んできた。そこにモンスターがいるとでもいうように。最終回では人生の豊かさや幸せという普遍的なものを、作品を見る者にも問い掛けたかたちだ。亮子がこぼした涙が胸に迫る。
ラスト、「神波先生にとっての幸せって、何?」と杉浦に問い掛けられた亮子は、言葉にはせずに、とびっきりキュートな笑顔を見せた。弁護士という仕事をしていることが幸せなのだろうか。そうでなくても、楽しそうな亮子にまた会いたいと思うような終わりだった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部