瀧内公美が夜の女を熱演した意欲作が釜山国際映画祭に正式出品!
映画「ヴァイブレータ」(2003年)、「さよなら歌舞伎町」(2014年)の廣木隆一監督が自身の小説を映画化し、女優・瀧内公美が主演を務めた「彼女の人生は間違いじゃない」(公開中)が第22回釜山国際映画祭の「アジア映画の窓」部門に正式出品され、廣木監督と主演の瀧内、共演の俳優・高良健吾が上映後の観客とのQ&Aに登場した。
瀧内はオーディションで主演に抜擢
映画「彼女の人生は間違いじゃない」は、廣木監督の出身地でもある福島が舞台。震災から5年後が経過した福島を舞台に、週末になると高速バスで福島から渋谷へ、デリヘルのアルバイトをしにいく市役所職員・みゆき(瀧内)の日常の描写を通して、今の時代を生きる一人の女性が悩みもがきながら光を探し続ける姿を描く。廣木監督自身、「どうしても描きたかった」と熱望した物語だ。
主演を務めた瀧内公美はオーディションでみゆき役に抜擢。福島では仮設住宅に住む「みゆき」を演じるため、撮影期間中は一度も自宅に帰らず自らを追い込んだ。廣木監督にとっても瀧内にとっても特別な思いの宿った作品が映画祭のスクリーンで上映されると、被災者が向き合う現実や、未来の見えない人生に向き合う登場人物たちの姿に観客は食い入るように見入ったり、涙をこぼす姿も。上映終了後にはあたたかな拍手に包まれた。
高良健吾「これはハッピーエンドではなく、過程」
作品の上映後、登壇した廣木監督と瀧内、高良。瀧内は今回が映画祭初参加。廣木監督は本作を撮ろうと思ったきっかけを問われ、「震災後に福島に行ったときに、その時にそこで見たときの自分の感情がどういう感情なのか整理がつかなかったです。そのため、すぐには映画を撮ろうとは思わなかったんですが、5年経って自分の気持ちの整理がついて映画を撮りました」と回想。「この作品はハッピーエンドだと思うか」という質問には、瀧内が「福島という場所は進んでいるようにも止まっているようにも見える場所です。今でもそういう状況が続いていて、その中で、これでハッピーエンドでしたとしたいわけではなく、これからも続いていく、生きていくんだと私は思っています」と語り、高良も「これはみゆきの人生の過程だと思います。ハッピーエンドではなくて、傷ついた人達、今もどう進んでいいかわからない人たちが幸せになったらいいな、そういう想いがあります」と答えた。
瀧内、「福島の人たちからいろんな思いをもらった」
Q&Aの締めくくりに、瀧内は「撮影時は福島の人たちと色々な話をしながらこの作品を作ってきて、福島の人たちからいろんな思いをもらって、上映をすることが出来ました。日本では、こういった起きた出来事をドキュメンタリーではなく映画にして、それを色々な世界の人に知ってもらえるということが私はすごく嬉しいですし、やりがいがあったなと思いました。こういうことがあったんだなということを忘れないでいてほしいです」と語りかけ、観客から温かい拍手を送られた。
今後の女優としての目標について、ザテレビジョンのインタビューで「今できることを常にやっていく、というのを大切にして生きていきたいです。私は人に会うとすごくエネルギーをもらえるのですが、そういう人との出会いや、そこから感じたことを大切に表現していけたらいいなと思います」と語っていた瀧内。国内外の映画ファンとの交流を経て、目標にまた一歩近づいたに違いない。