【テレビの開拓者たち / 古沢良太】日本だけじゃなく、世界中の人たちが見るようなものを作りたい
たとえ変人でも、“体温が感じられる人物”を描きたい
――古沢さんは脚本を執筆する際、全てのキャラクターを演じながら書かれるそうですが…。
「ああ、そうですね。演じながら、というか、なりきって、というか(笑)」
――そうするうちに、俗に言う“キャラクターが勝手に動き始める”という状態に?
「どうなんでしょうね…。僕の場合は、そういうことじゃなくて、ただ自分がやってみたいだけなんだと思います(笑)。こんなセリフを日常でも使ってみたいなとか、そういうシンプルな感覚なんじゃないかな」
――では、古沢作品の個性豊かなキャラクターたちは、どのように生まれてくるのでしょうか?
「そこまで風変わりな人物を作っている意識はないんですけど…いや、あるか(笑)。ただ、たとえ変人だとしても、体温が感じられない人というか、実体感のない人にならないように、自分との共通点や誰もが共感できる部分を頼りに書くようにはしていますね」
――古沢さんにとって、脚本家としてターニングポイントとなった作品は?
「『ゴンゾウ~伝説の刑事~』(2008年テレビ朝日系)ですかね。オリジナル脚本だったんですが、自分がゼロから発案したことを、いろんな人たちが熱を持って形にしていく、という工程を目の当たりにして。やはり学ぶところは多かったですね。また、向田邦子賞をいただいて、やっと『脚本家です』と胸を張って言えるようになった作品でもあります。残念ながら視聴率的にはたいしたことはなかったんですが、他にもいろんな賞をいただいたりして、関わったみんなにとっても、いい思い出になってるのかなと、なってたらいいなと思うんですけど」
――「リーガルハイ」のヒットも、大きかったのでは?
「『リーガルハイ』は、実は視聴率が特別高かったわけでもないし、正直、『もっとああすればよかった』という悔しい思いもたくさん経験した作品なんですね。でもその一方で、たくさんの方々から『面白かった』と言っていただけたのは確かですし、いまだに“リーガルハイの人”と呼ばれることもある。そういう意味では、後から強制的にターニングポイントにされてしまった作品、と言った方がいいかもしれません(笑)。もちろん、大事な作品のひとつではあるんですけど」