家治の思いに意次が涙
「もう、実の子は、諦めたいということじゃ」。
そう意次に話す家治。意次は、知保の方らの企みではないかと言うが、「それでも、あれは知保の心の叫びであろう」と家治の決意は揺らがない。意次は「それでよろしいのでございますか」と問い掛けるが、家治は「実のところ、余の血をつなぐのが怖いところもある」と本音を明かし始める。
家治の父である9代将軍・家重は身体が不自由だったといわれる。家治は祖父にあたる8代将軍・吉宗が「身体の利かぬ長男に跡を継がせ、秀でた次男三男を選ばなかった。その遺恨が今日の異様な有様を作り出しているというのは、余の思い込みか?」というのだ。その思いの奥には、多くの男の子どもを持つ治済の不気味な存在感もあった。
「ゆえに余にできることは二つだと考えた。一つは養子を取り、因縁を断ち切ること。さすれば、これ以上、若い命をいたずらに失うこともなくなる。そしてもう一つは、そなたらを守ることじゃ」と家治。
その言葉に意次は驚きの表情を浮かべた。家治は続ける。「父上の政(まつりごと)が持ちこたえたのは、そなたや武元、大岡などの忠誠あってのこと。そなたらはまさしく父上の“知恵袋”であった。そして今日(こんにち)は余の…。よかろう、血筋は譲ろう。しかし、“知恵”は、“考え”は譲りたくない。十代家治は凡庸なる将軍であった。しかし一つだけ素晴らしいことをした。それは田沼主殿頭(とものかみ※意次のこと)を守ったことだ。田沼がおらねば、今日の繁栄はなかったのだから。余は後の世にそう評されたい。かなえてくれるか」。
その言葉を神妙に聞き入った意次は、涙をこぼしながら、家治に終生仕えることを誓うのだった。
血筋をあきらめても、世の繁栄を願う家治の将軍としての熱い思い。そのために必要だとされた誇りにうれし泣きする意次。
その後に描かれた蔦重と鱗形屋のつながりにもらい泣きしたが、この家治と意次のつながりも胸に迫った。
SNSでも「家治と意次の主従関係最高過ぎん?」「エモい」「家治の心意気、うれしかっただろうな」「意次と一緒に泣いた」「絆にしびれた」と感動の嵐。家治の思いを長ぜりふにのせた眞島と、またしても涙の名演を見せた渡辺のすばらしさも光った。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。








































