ダンス界において、ダンサーなら誰でもその名前を知っているカリスマカンタロー。さまざまなダンスエンターテイメントを生み出してきた株式会社アノマリーの代表取締役であり、自身もプロデューサーとして"DANCE ALIVE HERO'S(旧 DANCE@LIVE)"などの大型ダンスイベントやBeat Buddy Boiなどのアーティストプロデュースも行っている。そんなダンス界に置いて重要人物となるカリスマカンタローに、現在のダンスシーンについてインタビュー! 後編は、来年開催のDANCE ALIVE HERO'S"の展望についてと若手ダンサーに伝えたいことを語ってもらった。
真っ当にダンスをやって、目立つことをすれば、ちゃんと対価がもらえるような世界にしたい
ーー前編ではSNSのフォロワー数やファンの数など影響力を持ったダンサーが収益が上がるダンス界にしたいという話をさせてもらいました。そう考えると、大人のダンサーより10代のダンサーの方がファンを作るという意識と行動はできていると思います。10代のダンスシーンについてどう思いますか?
「若い子の方ができてますよね。意外と10代の子たちは上の世代を冷静に見ているはずなんですよ。僕が話してきた10代のダンサーの中にはダンス界の現状を見て、仕事は仕事、大学は大学できっちりいきますって言ってる子もいて。その上でガンガン世界と戦っていきますって考えている子もいますね」
ーー確かに10代のダンサーに取材した時に、同じようなことを言っていたのを思い出しました。今後はこういう流れになっていくのでしょうか?
「今の若い子たちは色々ツールを使えるし、僕たちが思っているより大人だし、上の世代を見て育っているから色々と選択肢があると思います。ダンスシーンの環境も良くなってきましたしね。僕は10代から20代前半の子たちが、どのようにダンス界と付き合っていくのか気にしていて、そのために出口を作ったり、箱を作ったり、プラットフォームを作る準備をしてます。一番カッコイイダンサーが稼げるっていう流れにしないといけないですしね。“カッコイイ”の定義はそれぞれの視点であるけど、僕はファンの数だと思ってます。ただ、ダンスがカッコよくなくてもファンを増やすのがうまくて仕事を取っているダンサーがいるのも事実なので、そこのあべこべな部分は早くなんとかしたいと思っています。今の若い子たちには、真っ当にダンスをやって、目立つことをすれば、ちゃんと対価がもらえるような世界にしたいです」
誰もが見たいと思うドリームカードを組みたい
ーーそう考えると、今年のアライブは今までで一番ヒーローを作るというのがわかりやすく伝わりました。ALL STYLESで優勝した馬さんが、都内のイベントに呼ばれたり、一気に注目されて、サクセスストーリーができているなと。今年のアライブはカリスマカンタローさん的にどうでしたか。
「アライブファイナルは今まで12回やっているのですが、10周年とか次の年も全然楽しくなくて、消化不良でした。両国国技館で10回やってもまだこのくらいかという感じで、自分の中では納得できてなかったんですよ。色々悩んで、自分の中でハマってなかったなというのがあっての今回だったので、そういう意味では今までより手応えはあったと思います。まだまだ@を外すことに対しての浸透度がなさすぎるので、そこはまだ時間がかかりそうです」
ーー来年の展望はありますか
「今までやってきて、みんなが認めるヒーローみたいな、わかりやすい象徴があまり作れなかったと思ってて、それがもっと作れるようにしたかったから、"DANCE ALIVE HERO'S"に名前を変えたんですね。来年はそれをもっと分かりやすくするのと、注目を集めるためにバトルカードが面白くしようと考えました、4STYLESだけあえてトーナメントの3枠を招待制にしたんです。みんなが見たいドリームカードが実現できるような招待枠にしようと考えてます。まだ思案中ですが、みんながどんなバトルカードを見たいのかというのも聞いてみたいので、みんなが選ぶ一人を招待枠の中の一つにしてもいいかもしれない。エンタメ性もありますしSNS上で盛り上がったら、それだけでプロモーションにもなりますし、面白いですよね。あとは今年から陪審員制度を取り入れましたけど、ちゃんとみんなの票が入るような状況はなんとかして作りたいです」
ーー招待枠なのですが、その年に活躍したダンサーと表記があったのですが、具体的に活躍の定義とかはありますか?
「まだ発表してないので、詳しくは言えないのですが、国内外の有名なバトルイベントの実績をひとつの基準に、世代間のバランスや誰もが見たいと思うドリームカードを組めたらいいなと考えています。若手が多ければ大御所のダンサーに出ていただいたり、上の世代が多ければ下の世代をフックアップしたり、このダンサーのバトルを見たいなっていう声も参考にする予定です」
自分たちの新しいダンスシーンを作ってほしい!
ーーイベント前の盛り上がりも大切ですし、全世代巻き込んでのドリームカード楽しみです。話を若手ダンサーに移して、注目している10代ダンサーはいますか?
「このままいけばスターになるのはShigekixでしょうね。人間性もダンスもしっかりしているし、ブエノスアイレスユースオリンピックも始まるわけで、そうなると自然に名声が上がると思います。全体的に見るとコアなダンスを踊ってるけど、オシャレでかわいい子が増えたと思います。ただ、私服はオシャレなのに、ダンスだとそうじゃない子もいるので、そのバランスは取ってほしいですね」
ーー10代ダンサー含め、若いダンサーにこれはやっておいた方がいいということはありますか?
「ダンスを通して、自分の影響力をどのようにしていくのか可視化した方がいいです。10代の子や小学生にかっこいいと思うものをマーケティングした時に、”フォロワーが多い”というのがありました。これって戦闘力だと思ってて、例えばドラゴンボールのスカウターで、あいつの戦闘力が5万とか、10万とか。それがまんま当てはまるんです。その方向性で考えれば、まず自分というダンサーの影響力をつけるために、最適なツールを見つける。インスタなりYouTubeなり、自分を発信するSNSを選ぶ。そこで自分のブランドを築いていって、ファンを作る。そして、ファンから対価としてお金をもらう。その代わり自分はファンに何を渡すのか、ダンスなのか人に勇気を与えるようなブログなのか対価を考える。その設計をした上で、そのフィールドとしてダンス界の何を選ぶのか、A-POPなのか、バトルを選ぶのか、世界のバックダンサーになるのかというのを選んでいくことが大切です。本当は大人が道筋を伝えないといけないんですけど、これを伝えられる人は少ないので、僕もそういうのも教えていけたらって思います。大人のいうことを全て素直に聞くんじゃなくて、イベントが多いなら、出るべきイベントを選ぶ。レッスンも行かなきゃじゃなくて、目的を持って行く。クリエイティブな人間になってほしいので、自分でも頭を使って欲しいです。ダンサーとしてこうなりたいから、こうするんだっていう逆算できる世代になってほしいですし、自分たちの新しいダンスシーンを作っていってほしいですね」
撮影●外山繁 取材・文●のざたつ
カリスマカンタロー●日本の実業家兼ダンサー。ダンスイベントビジネスを中心にストリートカルチャー全般にまでビジネスを展開中。2004年6月にアノマリー(現・株式会社アノマリー)を設立。ダンスシーンにおいて彼の存在を知らない人はいないほどの重要人物。主催/プロデュースを手掛ける『DANCE ALIVEシリーズ(DANCE ALIVE HERO'S/DANCE ALIVE WORLD CUP)』は毎年両国国技館で開催しており、世界最大級の動員数(1万2000人以上)を誇るモンスター級のダンスイベントである。
●DANCE ALIVE HERO’S
https://www.dancealive.tv/dancealive