世界が愛する「家族」と「無常」の美学
先述のとおり、世界的にも高い評価を得ている小津作品。批評家たちは、小津の映画が国や文化の壁を越えて人々の心に響く理由として、「無常観」の描写を挙げることが多い。仏教的な思想に根ざしたこの概念は、世の中のすべては移り変わり、永遠に変わらないものはないという考え方だ。
たとえば「東京物語」では妻の葬式から慌ただしく去っていった子どもたちを見送った父・周吉(笠智衆)が、近所の人と「1人になると、急に日がなごうなりますわい」と会話するシーンがある。時間がもたらす別れと老いの悲しみ、子どもたちが親元を離れていく喜びと寂しさ…それでも現実を受け止めて歩み続ける強さ。切っても切れない家族の絆すら時間とともに変化していく。リアルで、苦く、しかし直視しなければ進めない普遍性が彼の作品にはある。
時代も国境も超えるテーマゆえに、数々の映画監督に大きな影響を与えてきた小津。2025年6月には小津をモデルにした舞台「先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~」が、行定勲監督と中井貴一のタッグによって上演された。
同作は「苦悩する“名匠”の一日」を小津作品へのオマージュを込めて描かれたフィクション。なお当時の古き良き映画界への想いを重ね、そこに流れていた豊かな時間を“小津調”で描く舞台は、CS放送「衛星劇場」で9月28日(日)夜7時30分からテレビ初放送される。
また「衛星劇場」では同舞台のテレビ初放送にあわせて、小津安二郎監督作品「東京物語 4Kデジタル修復版(※2K放送)」を9月6日(土)昼5時ほかから、「秋刀魚の味 デジタル修復版」を9月6日(土)夜7時30分ほかからオンエアするという。さらに10月にも小津監督のサイレント映画などを放送予定。
小津安二郎が残した作品は、単なる家族の物語ではない。人生の無常を静かに受け入れ、それでもなお前向きに生きていくことの美しさを描いた普遍的な人類の物語だ。そしてその根底には徹底した美学と、人間に対する深い愛情があった。彼の映画はこれからも時代を超えて、人々の心に静かに、そして深く響き続けるだろう。
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松竹






























