2002年にアメリカで劇場公開され、日本を含む世界各国で大ヒットしたディズニーの人気アニメーション作品「リロ＆スティッチ」の実写版が9月17日よりディズニープラスで配信スタート。本国アメリカでは2025年5月23日、日本では6月6日から劇場公開され、全世界興行収入10億ドル(日本円で約1480億円)を突破するヒットとなった作品だ。タイトルロールの一人、スティッチの声をアニメ版から引き続き担当した山寺宏一をはじめ、日本語吹替版も人気だった本作をあらためてレビューする。(以下、ネタバレを含みます)
ハワイを舞台に、6歳＆18歳の姉妹と暴れん坊のエイリアンが出会う
物語の舞台となるのは、ハワイのカウアイ島。両親を亡くし、18歳の姉ナニと2人暮らしのリロは、想像力が豊かな6歳の少女。同級生たちから“変わり者”扱いされ、いつも独りぼっちだった。
流れ星に「友達をください。私をバカにしない、私から逃げて行かない親友が欲しい」と願うリロ。そんな彼女はある日、動物保護センターで不思議な容貌をした“犬”と出会い、連れて帰る。
実は、その“犬”は、銀河連邦のエイリアン・ジャンバ博士の違法な遺伝子実験により破壊生物として生み出された「試作品626号」というコードネームのエイリアン。リロが流れ星だと思ったのは、銀河連邦からの追放が決まった試作品626号が、宇宙船を盗んで脱走し、地球に不時着したときの光だった。
リロにスティッチと名付けられた試作品626号。予測不能な彼の行動は、大混乱を巻き起こしながら、姉妹を変え、またスティッチ自身にも変化が訪れる。
実写ならではの共感性と面白さ
ちょっとだけ個性的で、それゆえに友達付き合いを敬遠されてしまうリロ。両親のいない寂しさを姉に求めようとしてもうまくいかない悲しみも垣間見える。ナニは、一人でリロを育てようと学業とアルバイトに奮闘するが、突拍子もない行動をするリロの世話もあり、生活はパンク寸前。児童福祉局の職員には育児能力に問題があるとして、改善を要求されてしまう。そんな2人の状況は、俳優の息づかいが分かる実写になることで現実味がさらに増し、一段と胸に迫るものがある。
実写化にあたり、ストーリーラインはほぼ忠実といえるが、優秀なナニが海洋生物学の仕事に就くための大学進学で授業料免除も決まっていたが諦めようとしていること、リロとナニの家の隣人で、ナニに恋するデイヴィットの祖母・トゥトゥがオリジナルキャラとして登場し、姉妹を支えて深く物語に関わるなど変更点も。その多くはブラッシュアップともいえるだろう。
心情表現の丁寧さもそうだ。リロとナニの背景をより深くし、2人の両親が大切にしていたオハナ＝家族の絆が重層的に見える仕上がりへとつながっている。
ブラッシュアップで面白さも増した。例えば、スティッチを捕獲するために地球にやって来るジャンバ博士と、“地球専門家”のエイリアン・プリークリー。銀河連邦のリーダーである議長から地球で目立たぬようにと命じられており、アニメ版では人間の服を着るだけだったが、実写版は適当な人を見つけて“コピー人間”のように変身する。
CGから実写キャストへ。最初、人間の姿形に慣れずにカクカクした歩きになってしまうところはクスッと笑ってしまう。また、ジャンバ博士が発明したポータル銃でできるワープ穴のようなものが引き起こすアレコレは笑いどころでもあり、重要なアイテムとして物語を彩る。
