雀は「40までにしたい10のこと」のリストを消していく
リストの期限、すなわち雀の40歳の誕生日まで残された時間があと1日になる。雀は、慶司に対してそっけない態度をとり、意識的に距離を取り続ける。慶司から24日の予定を聞かれても向き合わずに逃げてしまう。
夜、薄暗いオフィスでコーヒーをいれた雀は退勤する社員に「お疲れさま」と声をかけ、テーブルに戻りながら「田中のせいでも誰のせいでもない。全部俺が決めたことなんだ」と思う。
テーブルでパソコンに向かい、「40までにしたい10のこと」のリストを開いてback spaceボタンに目をやる。「消してしまえば」と心の中でつぶやき、意を決したように1回押すとバックハグした慶司が逆再生されて腕を離して遠ざかる。
「タコパ」の文字を消せば、たこ焼きを食べる雀、たこ焼き器を出す慶司、雀の部屋に入って来る慶司が逆再生される。
雀は涙目になりながら「シーパラ」の文字を消す。雀クレープを渡す慶司が逆再生され、雀からクレープを奪うようになる。
「カフェですごいカスタマイズをする」を雀が無心に消すと、笑いかける慶司、すごいドリンクにホイップクリームが盛られる様子、雀の隣に座る慶司が逆再生され、ホイップクリームは吸い取られるようになくなり、慶司は離れていく。
「服の趣味を変える」「オーダーメイドのヤバい枕」も消し、どんどんと雀と慶司が逆再生されて、慶司が雀から離れていく。
雀はとうとう「恋人をつくる」「キス」「誕生日を恋人と過ごす」も消してしまい、しばらく目に涙を溜めながら真っ白になったリストを見つめ、パタンとパソコンを閉じるのだった。
リストを消すと思い出が逆再生され、近づいていった雀と慶司の距離がどんどんと離れていき、涙が溢れてとまらない。編んだ毛糸をほどいていくように最後はすべてが消えてしまったかのようで、胸が痛いほどに苦しくなった。X(旧Twitter)でも、「本当に辛すぎて めっちゃ泣いた」「逆再生に心えぐられた」「逆再生の演出は心が痛くて痛くて痛くて」「タコパの道具が箱に戻っていくのすごく悲しい気持ちになる」「切ない…」とコメントが寄せられ、トレンド1位を獲得した。
◆構成・文＝牧島史佳
