CS放送「衛星劇場」では「VHSを巻き戻せ！俺たちのOVA特集」と題して、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)作品を放送中。11月は1990年代のOVA作品で多彩な才能を発揮したねぎしひろし(根岸弘)氏が原作・総監督を務めた「マスターモスキートン」(1996～1997年)などが一挙放送される。今回はねぎし監督のキャリアに触れながら、上記の作品を紹介する。
令嬢＆吸血鬼が不老不死の力を持つ“Oパーツ”を探す旅へ
1980年代から1990年代、テレビアニメとはひと味違った革新的なOVA作品が次々と誕生していた頃からアニメーションの演出・監督として活躍してきたねぎし氏。
いくつかのプロダクションで研鑽を積み、現在も株式会社セイバープロジェクトの代表取締役、株式会社ゼロジー代表取締役会長でありながら監督としても活動中だが、出世作の一つとして挙げられるのは、1990年に放送されたロボットアニメ「NG騎士ラムネ＆40」だろう。
同作でシリーズ構成を担当した脚本家・漫画原作者のあかほりさとる氏とは、その後も度々コンビで制作を担った。放送から35年たった今でも愛され続ける同アニメは、2025年10月からYouTubeで全話配信を開始し、35周年を記念する展示会が2025年11月に都内で開催される予定。
今も多くのファンに支持されていることがうかがえる。ちなみに同アニメを手掛けた株式会社葦プロダクションも2025年に50周年を迎えた老舗だ。
その他にもOVA作品として1990年代前半に人気を博した「天地無用！」シリーズが、1995年にテレビアニメ化された際にはねぎし氏が監督を担ったほか、2023年に発売された同作の30周年記念作品となる「天地無用！GXP パラダイス始動編」では総監督も務めた。
そんなねぎし氏があかほり氏と再びタッグを組み、原作・総監督として手掛けたOVA作品が「マスターモスキートン」だ。同作は主人公で令嬢のイナホ・ヒトメボレ(CV：今井由香)が彼女から“モーちゃん”と呼ばれている吸血鬼・モスキートン(CV：子安武人)と共に、永遠の命を得られるという「O(オー)パーツ」を探す冒険に出掛ける物語。
第1話「倫敦大混乱！」では、棺桶で眠るモスキートンとイナホが血の契約をするところから始まり、といっても主従でも友情でもなく、まるで同居中の恋人のような距離感なのが実にかわいらしい。
ロンドンに突如出現したピラミッド内にOパーツが隠されていると確信したイナホは、モスキートンと彼の使い魔・ホノオ(CV：うえだゆうじ)、ユキ(CV：根谷美智子)と共にロンドンへ向かう。ピラミッド周辺にいる護身の兵士たちをかわし、ピラミッド内に潜入した一行はOパーツらしきものを発見。不老不死になりたいイナホは、早速飛びつくと、モスキートンの宿敵・サンジェルマン伯爵(CV：矢尾一樹)が現れる。
ホノオとユキが彼に立ち向かうが歯が立たず、「勝つにはこの方法しかない」とばかりに意を決したモスキートンは、イナホの首筋をかんで血を吸うことで覚醒し、サンジェルマン伯爵との戦いに臨む。そして圧倒的な力でサンジェルマン伯爵に重傷を負わせた。
彼が逃げ出したことで一件落着…かと思いきや、覚醒したままのモスキートンは我を忘れ、目の前にいるイナホへと襲いかかる――というのが第1話のストーリー。
コメディーからSFアクションまで、ねぎし監督作品を放送
イナホとモスキートンのラブコメタッチなやりとりや会話は程よく色気もあり、軽妙で楽しい。突飛な設定や派手な演出の裏側に、キャラクターたちの不器用な感情や、ちぐはぐな関係性が丁寧に描かれているところも魅力的だ。それだけでなく激しい戦闘シーンもあり、時折グロテスクな描写も交えるなど、OVAならではの自由度の高い作風となっている。
第2話以降では、ピラミッド内で起こる悪夢や“モスキートンの妻”を名乗る謎の美女が登場するなど、次々と新たな展開が描かれていく。
なお、定期的にOVA作品の魅力を紹介している衛星劇場の11月の「VHSを巻き戻せ！俺たちのOVA特集」では「マスターモスキートン」が、11月1日(土)深夜0:15から放送されるのを皮切りに、ねぎし氏が手掛けた作品が特集放送される。
11月3日(月)夜8:00ほかからは、米軍基地の真ん中にある治外法権の病院を舞台にドジな見習い看護師が奮闘するコメディー「菜々子解体診書」(1999年)を、11月8日(土)夜10:00ほかからはテレビアニメ「テッカマンブレード」の制作スタッフが再集結したSFアクション「BOUNTY DOG 月面のイブ」(1994年)を、11月12日(水)朝10:30ほかからは「イクサー1」を生み出した漫画家・阿乱 霊氏が描く未来世紀アニメーション「魔境外伝レディウス」(1987年)、そして細野不二彦氏の人気コミックをアニメ化した「闇の司法官 ジャッジ」が11月17日(月)夜8:05ほかから、それぞれ放送される。
いずれも現在配信では視聴困難な"幻"と言える貴重な作品群“ねぎしワールド”の多彩な魅力を堪能できるラインナップだろう。
◆文=suzuki
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