
ディズニー作品らしい映像美も圧巻
動物たちの楽園=ユートピアのはずが、本質的にはそうではなかった…。ただ、本作はその現代社会が抱える問題を深く、でも軽やかに描き出す加減が秀逸だ。差別や偏見に遭遇してきた大人には深く突き刺さりつつも楽しい見せ場に笑い、これから巻き込まれていくだろう子どもたちには楽しさの中に映し出される教訓として心に印象づける。
それらはアニメだからこそ楽しく描けるものでもあるだろうが、ディズニーが誇るアニメーションの技術の素晴らしさは本作でも光る。ジュディやニックをはじめ、動物たちの毛並みや表情、しぐさの愛らしい表現力。ズートピアという心躍る一面と暗い一面のある大都会の質感。動物たちの世界ながら、感情移入を可能にする没入できる世界観に仕上げている。
大人の映画ファンには、裏社会のボスが映画「ゴッドファーザー」(1972年)へのオマージュとなっていることにも引きつけられるに違いない。もちろん、ディズニー作品に多々あるように、他のディズニー作品のネタも多数登場する。
また、ディズニーといえば“ヴィラン”の存在だが、本作ではちょっとひねりが加わっているのもポイント。ネタバレとなるので言及は差し控えるが、そういった構成も面白さを増している。
日本語吹替版では、ジュディを俳優の上戸彩、ニックを人気声優の森川智之が務めている。上戸はジュディの真っすぐさをうまく出していて、ディズニーやマーベル、ピクサー作品で多くのキャラクターを担当する森川は安定感があり、そんな2人の軽妙なやりとりが生き生きと物語を盛り上げているのも魅力の一つだ。
◆文=ザテレビジョンシネマ部


KADOKAWA
発売日: 2025/12/05
































