
警戒しまくりの治済だったが思いがけない展開に
ふざけつつ、“分”を持ち出した、らしさ満点の案を出した蔦重。折しも家斉は大奥で先代将軍の家治(眞島秀和)のたたりがあるといううわさを気にしていた。定信は家治の異母弟である清水徳川家当主・重好(落合モトキ)に協力してもらおうとするが、察知した治済に邪魔される。
しかし、蔦重が曽我祭の際に、治済が買い求めた役者絵の代金を支払った大崎が金を包んだ紙に家斉への文をしたためていたことを見つけた。それを栗山が家斉に届けた。そこには乳母だった大崎が治済の悪行を止めてほしいと書かれていて、家斉はまだ幼い時に最期のときを迎えた家治が言い残したことがよみがえった記憶とも合致した。
決意した家斉は、定信らの計画に乗り、治済を重好の邸宅に連れ出した。茶室に迎え入れられた治済は警戒し、茶菓子として用意されたまんじゅうに手をつけようとしなかった。治済のまんじゅうも家斉が食べたのに安心したのか、重好が点てた茶を家斉が飲んだあとに茶碗を渡されると、残りを飲み干した。
何も起きなかったことに安心した次の瞬間、家斉が突っ伏して治済は焦る。「まさか…まさか、もろともに!?」。そう言ってなんとか立ち上がった治済だったが、そのまま倒れこんだ。
ただ、その毒は“眠る毒”だった。一町民である蔦重にとって、自分が加わった計画で死者が出るというのは気分がいいものではなかった。それに栗山が「どれほど外道な親であっても親殺しは大罪。義はあっても上様は大罪を犯すことになり、それを仕掛けた私たちも外道に成り下がる」と賛同し、眠っている間に治済と斎藤を入れ替え、治済は阿波の孤島に送ることにしたのだった。

「そうきたか!」とともに伏線回収されていく面白さに視聴者沸く
もともと仇討ち計画では写楽で世間を騒がせるという役割をになった蔦重。本作では歌麿ほか絵師や戯作者たちの集合知となったが、歴史的には斎藤十郎兵衛が写楽の正体だという説が有力となっているそうだ。その斎藤を「そうきたか!」と思わず膝を打つ展開で組み込んだのに始まる面白さ。治済が能面の収集癖があったという以前の場面にもつながり、治済となった斎藤が能面を手に取ったときの表情は、治済とは違う能役者としての純粋な喜びが伝わってきて、1人2役で演じた生田斗真の見事さだった。そして、本屋としていくつものアイデアを出してきた蔦重らしい「毒まんじゅうには毒まんじゅうを」という、鮮やかでいて痛快な復讐。週タイトルの「饅頭こわい」は、落語の演目で知られるが、実にオチとして秀逸で粋な「そうきたか!」となる結末だった。
本作では蔦重の商才に「そうきたか」と、登場人物たちも視聴者も何度もうなってきた。それがクライマックス直前まで盛り上がった。次週、12月14日(日)の放送が最終回となるが、さらなる「そうきたか」に期待したくなる。
SNSには「一橋治済がこんな結末を迎えるとは」「なんて痛快」「まさに痛快娯楽時代劇」「死なない仇討ち、よかった」「一年がかりの伏線が全部回収できた痛快さ」「クライマックスへの伏線回収がエグい」「面白過ぎる!」など反響が寄せられた。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

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