丸1日がかりの撮影となった「筑前煮」のシーン
――毎回登場する料理シーンでこだわった点があれば教えてください。
特に手間がかかり、撮影に時間がかかったのは筑前煮とおでんです。筑前煮は撮影に1日ほどかかりました。というのも、細かい飾り切りや面取り、厚めに皮をむくといった調理の工程を、本当にちゃんとやらないと映像で伝わらないからです。厚い皮のむき方や、実際に飾り切りができるかといった点にこだわりました。
そのため、料理シーンの撮影前には、調理の先生を呼んで、夏帆さんや竹内さんもしっかり練習してから本番に臨んでいました。いざ撮影に入ると、カット数も多いので、みんなひたすら集中して取り組んでいました。
また、私個人的に少し心配だったのは、竹内さんが背が高いため、セットのキッチンが日本基準の高さのキッチンに立つ時、ずっと中腰でいて大丈夫かな、と。ですが、結果的にはその巨大な感じがキッチンに立っている姿に迫力と説得力を与えていて、良かったかなと思っています。

――勝男が出汁を取るシーンも実際に撮っているそうですね。
劇中の調理シーンは、包丁さばきも、出汁をゆがく(煮出す)作業も、ラーメンを茹でるのも、すべてご本人にやってもらっています。今回は竹内さんをはじめ、みんな「勝男としてやり遂げよう」という意識が高かったですね。
カメラマンチームは、「どの角度で飾り切りを撮ったらおいしそうに見えるか」と料理番組をたくさん研究してくれました。また、1回目の筑前煮が失敗して、だんだんうまくなっていく過程を表現するために、編集チームも彩りについて細かく調整してくれました。
カメラマンも「これくらい茶色かったらまずく見えるけど、これくらい彩りがあったらおいしそうに見えちゃうからどうしようか」と2日くらい相談して筑前煮をどう“まずそうに”見せるかなど、料理の見え方にはすごくこだわりました。

“泣き”のシーンは「思いが爆発しちゃったという表現はすごく大事に」
――勝男が自身の行いを素直に改め成長しようとする姿や、鮎美のことを一途に思い続ける健気さなどは、多くの視聴者から支持されていると思います。 勝男を原作よりも共感を集めやすいキャラクターとして描くことは、当初から意識されていましたか? また、演出面でのこだわりや強調したことなどがあれば教えてください。
素直さとか実直さがある部分だったり、あと竹内さん自身がすごく真面目な方なので、真面目な人が普通に泥くさく実直にやるとチャーミングに見えますよね。そこは竹内さんが作り上げてくれたと思います。
あとは、第3話や第5話での「泣き」のシーン。勝男はこれまでお父さんの勝(菅原大吉)の「人前で弱みを見せるんやない」という言葉で、ずっと人前では泣かないように「泣かないぞ」とか「泣いてない」と言っていたけど、その思いが爆発しちゃったという表現はすごく大事にしました。
竹内さんから「そうしたほうがいいんじゃないか」という提案があったので、「いいや、泣いてない」と言うけど、その後に泣いちゃうとか。泣きのところは簡単に泣かないぞというふうに見えるようにこだわりました。

――TVerの再生回数がTBSドラマの歴代記録をどんどん塗り替えている本作ですが、周りからの反響はいかがでしょうか? 印象に残っているコメントがあったら教えてください。
過去一番くらい反響をいただいています。意外だったのは、若い男性陣からも「見ています」という連絡が来たこと。その方に面白いところを尋ねると、やっぱり勝男の滑稽さや、コメディタッチなところが面白いと言っていました。
あとは、鮎美とミナトくんの恋に親近感というか、「ミナトくんの気持ちが分かる」と言っていて、そこはすごく意外な反響でしたね。それに、ここまで若い男性陣が見てくださっているというのは、今まで私が携わってきた作品の中ではあまりなかったことだったので驚きました。

本編よりお金がかかっていた「フォーエバーラブは東京で」
――また、勝男がハマっている劇中のドラマ「フォーエバーラブは東京で」もSNS等で話題となっていました。“コテコテ”のトレンディードラマという印象ですが、こちらについてもこだわった部分や裏設定などあれば教えてください。
勝男にとって教科書として、このドラマ「フォーエバーラブは東京で」を各話に散りばめていこう、というのが制作のきっかけです。
こだわったところで言うと、ヒロインの真理(青島心)の髪型やメイク、衣装が決まるまでに、10回ぐらいヘアチェンジを重ねました。俊平(橘優輝)のビジュアル面も、衣装さんやメイクさんの力添えでかなり研究していました。カメラも当時のカメラを使ったり、ロケーションもこだわっていて、本編よりもお金がかかっています。
橘さんと青島さんには、「フォーエバーラブは東京で」はこういうドラマなんですという企画書を作ってお渡ししたんです。田舎から上京したての俊平が、会社のマドンナ・真理と出会って恋に落ち、あらゆる東京での試練を乗り越えながらゴールインしていく、という裏設定を伝えました。

――それでは最後に、最終話の見どころを教えてください。
勝男は鮎美との生活を取り戻せるのか。鮎美は自分をもう一度信じることができるのか。最終話は2人が選んだ、その先にあるエンディングをお楽しみください。




































