
ほろ苦い物語に温かさを残した2年後のエピローグ
リカに去られてぼう然とする久部に樹里が語った。「シェイクスピアって不思議だったんです。戯曲を読んでいると、たまにどうしてこの人出てくるんだろうと思う人がいる。こんな登場人物いなくてもいいのに。ある時、気付いたんです。シェイクスピアは劇団の座付き作家だった。だから彼の頭の中には、いつも劇団員のことがあった。皆に役を与えないといけない。だからお芝居が下手な役者にも、ちょっとだけ舞台に立たせてあげたんじゃないかなって。だからシェイクスピアの作品は温かい。どんなに悲しい話でも、温かい」と。
シェイクスピアに彩られた本作も、久部が熱意を持って始めた劇団クベシアター、そして久部のリカへの恋心と蓬莱の樹里への恋心もほろ苦く終わったが、その2年後が描かれたエピローグは温かく、光を感じるようでもあった。
ジェシーが逮捕されたことで劇場が人手に渡り、劇団も解散となった蓬莱はテレビの仕事で活躍。リカは芸能活動をし、おばばは八分坂でクレープ店を営む。
そして、久部はジェシーが始めた弁当屋で配達を手伝っていた。その久部が弁当を届けた区の交流センターで、シェイクスピアの戯曲「夏の夜の夢」のせりふが聞こえてきた。
久部は誘われるように部屋を覗くと、そこにいたのはトニー(市原隼人)やモネ、大瀬、元支配人の大門(野添義弘)と妻のフレ(長野里美)など、かつての劇団クベシアターの俳優やスタッフたちだ。リカはいなかったが、蓬莱はいた。
ひっそりと見ていた久部に樹里が話し掛けた。「公演する予定はないんですって。たまに集まって、こうして稽古を。みんな楽しそう。あのころのことが忘れられないみたい」。
笑顔があふれるかつての仲間たちの姿に目が潤む久部。そのまま皆に声をかけることなく立ち去った久部だが、センターの受付が偶然にもWS劇場を去る日に久部の宝物だったシェイクスピア全集を渡した相手。再びシェイクスピア全集を手にした久部は、自転車で温かな日差しが届く渋谷のまちを帰りながら、いつしか立ちこぎになり、「ノーシェイクスピア、ノーライフ!」と叫ぶところで幕を閉じた。
おなじみとなった毎話の始まりを告げるシェイクスピアのせりふを引用した“エピグラフ”。最終回は「終わりよければ、すべてよし 途中の道がどうであれ」だった。久部が新たな道の一歩を踏み出すことも予期させたし、クベシアターに関わった者たちの明るい今も「すべてよし」だといえる。樹里の言葉は“群像劇”としての面白さにもつながっているのではないだろうか。
SNSには「最終回、すてきだった」「いつかまたどこかでシェイクスピアをやるクベシアターの皆に会えるといいなぁ」「樹里のシェイクスピア解釈がとてもよかった」「最後のシーンでトニーがうれしそうに演技してるの見て本当にグッときてしまった」「演劇に関わる人たちの群像劇に、三谷幸喜の演劇愛が込められていて素直によかった」などの感想が寄せられた。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

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