二宮和也主演「ブラックペアン」、原作小説と主人公を変えたその訳は? 【テレビの開拓者 / 伊與田英徳】
「陸王」(2017年)、「下町ロケット」(2015年)、「半沢直樹」(2013年)、「新参者シリーズ」(2010年ほか)など、TBS系日曜劇場の枠で放送された作品を中心に、数多くのヒットドラマを手掛けてきた伊與田英徳プロデューサー。現代社会で生きる人々の姿を、ダイナミックかつ丁寧に描き、“見る者の心を動かすドラマ”を世に送り出してきた彼は、一体どのような思いでプロデューサーという職務に臨んでいるのか。4月22日(日)スタートの最新作「ブラックペアン」への意気込みとともに、その信条を語ってもらった。
TBSドラマの名手・福澤克雄、植田博樹との出会いがターニングポイントに
──伊與田さんは、いつごろからテレビの世界で働きたいと思い始めたのでしょうか?
「20歳くらいのときにはもう考えてましたね。そんな中で、衝撃的なことがあって。ある日、飲み会をしてたんですけど、それまで楽しくしゃべっていた女の子が、急に『そろそろ「東京ラブストーリー」(1991年フジテレビ系)が始まるから』って言い出して、本当に帰っちゃったんですよ(笑)。僕は、『東京ラブストーリー』というドラマが放送されているのは知ってたけど、見たことはなくて。でも、その女の子の行動にショックを受けて、次の週に見てみたんですね。そうしたら、めちゃくちゃ面白かった(笑)。確か第3話くらいだったと思うんですけど、そこから毎週見るようになって。もともとテレビドラマは好きだったんですが、『東京ラブストーリー』は特に、忘れがたいものがありますね」
──では、ご自身が手掛けてきた中で、ターニングポイントになった作品は?
「全部の作品にそれぞれ思い入れがありますから、特定の作品名を挙げるのは難しいんですが、人との出会いという意味では、ジャイさん…福澤(克雄/TBS演出)さんと、植田(博樹/TBSプロデューサー)さんと出会ったことは、大きなターニングポイントになったと思います。
私にプロデューサーとはどんな仕事かを教えていただいたのが植田さんで、『真夏のメリークリスマス』(2000年)で、植田さんの元で協力プロデューサーとして参加したのが最初の出会いです。いろんな意味で鍛えられましたね(笑)、キャスティングから脚本づくりまで。中でも『ドラマを面白くするためだったら、何があってもその道を突き進むんだ』という、強い信念や覚悟を持っていなければ、プロデューサーは務まらないんだと。そういった、テレビマンとしての心構えのようなものを学んだ気がします。
そして、ジャイさんと出会っていなければ、今の自分はないと思います。ジャイさんから教えられたのは、『人がどう思うかではなく、自分が面白いと思うものを作るんだ』という、作品に対する強い姿勢ですかね。そして、とにかくスケールが大きい。役者さんの魅力をどう引き出すかということはもちろん、物事の本質を見抜くことの大切さ、目の前のことに捉われず先の先を見抜くことの必要さ、さらにはスタッフとのチームワークで生む出すパワーなど、挙げるときりがありません。出会いは、『白い影』のスペシャル(「白い影 直江庸介を憶えていますか」2003年)だったんですが、実はそれまでの2年間くらい、僕はドラマ制作に関わっていなかったんですね。でも、ジャイさんはそんな私でも分け隔てなく、他のスタッフと同じように接してくれて。…と言っても厳しかったですけどね(笑)。とにかく、演出はもちろんのこと、ロケーションからカメラアングル、キャスティングの細部まで、いい画を撮るためには極限まで突き詰める方で。監督だから当然なんですけど、私もかなり追い詰められまして。ところが、そのドラマがクランクアップしたときに、『おまえがキャスティングした役者さん、よかったよ』と言われて。その瞬間に全て許せちゃったというか、『この人に付いていこう』と決めました(笑)。
ジャイさんと植田さんからは、本当にたくさんのことを教えてもらいましたし、今でも教えていただいていると思います」