石原さとみが最優秀主演女優賞を獲得! 「“朝から天丼”はミコトを生命力のある人にしたくて…」
2018年冬クールに放送されたドラマを対象に開催した「週刊ザテレビジョン 第96回ドラマアカデミー賞」の受賞作が決定。最優秀主演女優賞には「アンナチュラル」(TBS系)に主演した石原さとみが輝いた。
死因究明専門のスペシャリストが集まる「不自然死究明研究所(UDIラボ)」を舞台に描かれた同作で、石原は、幼少期に一家心中に巻き込まれた経験を持ち、不自然な死を放置することが許せない法医解剖医・三澄ミコトを演じた。
視聴者からは、「等身大のヒーローを、格好良く、かつかわいげも見せながら見事に演じていた」といった意見が集まり、あえて抑えた演技が高く評価された。また、同作は主演女優賞のほか、作品賞、助演男優賞、脚本賞、監督賞、ドラマソング賞の6冠を達成している。
そんな石原を直撃し、ミコトを演じるうえでこだわった点や、早くも期待の声が寄せられている続編について話を聞いた。
--「5→9〜私に恋したお坊さん〜」(2015年フジテレビ系)以来の受賞となります。今回、「アンナチュラル」で主演女優賞を受賞した感想をお聞かせください。
主演女優賞はもちろん嬉しいですが、作品賞、脚本賞などを「アンナチュラル」が獲得したということも、とてもうれしい。6部門受賞って、すごいですね。
実はこのドラマは放送スタート前に最終回まで撮り終えていたので、撮影中は視聴者の皆さんの反応が予想できなかったんです。だから、とにかく野木亜紀子さんの脚本が本当に面白いということを頼りにというか原動力にして撮影を乗り切りました。自分がそんなすばらしい作品の一部になれて、評価して頂けたことがうれしいです。
--ミコト役の演技について、審査員や読者から「石原さんがミコトにしか見えなくなった」、「前に出過ぎない主人公像がよかった」と絶賛されました。役作りで苦労はありましたか?
最初に野木さんがあげてくれた脚本を読んだときは、ミコトはサバサバしたクールなキャラなのかなと思ったんです。でも、「クールではなく、穏やかで朗らかな感じ」ということだったので、感情をニュートラルにコントロールできる人にしようと思いました。私の喜怒哀楽のテンションでいうと、30%から60%の範囲をいったりきたりしているイメージ。それがはっきりつかめたのは第2話でした。
身元不明の少女の遺体が見つかり、神倉所長(松重豊)に「生きているときも助けられずに、死んでからも見なかったことにするんですか?」と抗議する場面。ミコトとして諭すような悲しみの目で演じてみたら、(監督の)塚原(あゆ子)さんがわざわざ「すごくよかった。素晴らしい」と言いに来てくださったんです。
ーー第5話や最終話では復讐のための殺人が描かれました。そんな緊迫した場面でもミコトの感情は60%以内だったのでしょうか?
やはり第5話は衝撃的でしたね。妻を殺された鈴木(泉澤祐希)が、ミコトの目の前でその犯人を刺してしまう場面。現場では一日中、雨が降る中、撮影して、とにかく集中を切らしたくなかったので、撮影の合間も資料として殺人について書かれた資料を読んでいたんです。かなりトラウマになるような話もあって、気持ち的には大変でしたね。あの場面ではミコトが「やめて!」と叫び、私の表情がスローで入る。演じながらそこでも「感情の幅がミコトの持っているものを超えていたら言ってください」と監督にお願いしていました。あの鈴木も中堂(井浦新)もそうですが、憎しみを原動力にするってやっぱり苦しいこと。そんなふうにジレンマがあって、正解を提示しないというスタイルは私の好みでもあって、1話ごとにそんな問いかけをしてくる野木さんはすごい!と改めて思いました。
ミコトには子供の頃、無理心中させられたという壮絶な過去がありますが、その背景はどう理解して演じましたか?
ミコトはその過去を引きずっているわけでもないけれど、楽に乗り越えているわけでもない。人間って意外とそうだと思うんですが、例えば自分の親が亡くなった事実を乗り越えるってどういうことなんだろう?って思いますよね。決して過去形にはできないし、そこに終わりはない。ミコトはそんな気持ちを内に留めておける人。UDIラボメンバーの前でも落ち込んだりはしない。でも、「殺人の半数以上は身内の間で起こる」という言葉を聞いたときに、その経験があるミコトの反応は、他の人とは微妙に違うわけです。そこは意識して演じました。そんなミコトが限界まで追い詰められ、涙を見せてしまったのが最終話、実家でお母さん(薬師丸ひろ子)たちを前に自分の無力さを嘆く場面だったのだと思います。
ーー第1話の冒頭、ミコトがロッカールームで天丼を食べていて、最終話のラストシーンも天丼を食べているのが印象的でした。
実は、最初に台本に書いてあったのは納豆巻きだったんですが、ミコトを生命力がある人にしたかった。生きることに貪欲なところを見せたかったので、「ここはがっつりと天丼で」と提案しました。海外ドラマだと、たいてい最初の5分でレギュラーのキャラクターを見せて、それぞれどういう人なのかを説明し、開始から15分以内に最初の事件が起こりますよね。そのテンポ感が好きで、まず出だしでミコトのキャラを見せたかったんです。それが後から振り返ったとき、ジャブとして効いてくればいいと思いました。それ以降は、牛丼や大きめのおにぎりを食べていって、最終回は「やっぱり天丼でしょ。最後ですから」ということになったんです。
ーー「アンナチュラル」は石原さんのキャリアにとってどんな作品になりましたか?
この作品が30代に入って最初の連続ドラマだったのですが、すばらしい共演者とスタッフ、米津玄師さんの「Lemon」という最高の主題歌に恵まれて、30代の良いスタートが切れました。そもそも、オンエアされたときTwitterのトレンドで「石原さとみ」ではなく作品名が入ってくるようなドラマをやりたいと思っていたんです。やはりこの仕事は、自分の中で目標を立てて、それを乗り越えることでしか成長していけないと思いますし、今回それを達成できた気がして嬉しかったですね。
ーー多くのファンを生んだ「アンナチュラル」ですが、ずばり続編はあると思いますか?
たくさんの方からそういう声を頂いて本当にありがたいなと思います。UDIラボはすごく心地よかったし、野木さんの書いてくださるメンバーの会話劇が大好きだったので、またいつかあの空間に戻れたらいいなと思います。