演出・菊地まさはるインタビュー
――この舞台との出会いについて教えてください。
2012年に別のプロジェクトで上演された「スペリング・ビー」に、副校長のダグラス・パンチ役で出演しました。
実は、(カウンセラーの)ミッチ・マホーニー役をやりたくてオーディションを受けたんです。
彼が歌う曲を歌いたい思いがあってね。その後新たに上演が決まった2016年に、演出をやらないか、とお話を頂いた。見知った作品で、面白い作品だったのでやってみようと。
――これまで何度も縁があるこの「スペリング・ビー」の魅力をどのように感じていますか?
登場人物の子どもたちは、それぞれにたくさんの問題を抱えています。友人関係、家族問題、イジメ、競争、ストレス、葛藤、生まれ持った性格や障害。
それでも「スペリング・ビー」の予選を勝ち抜いた。子どもたちの思いや、チャレンジしようという気持ち、負けるということを受け入れるという、いわば成長、そうした部分は、見る人の経験に通じるもので、共感を呼ぶテーマだと思います。
――その例を、いくつか教えてもらえますか。
例えば、リーフ・コニーベアという安全ヘルメットを持って出場している少年は、地方大会では3位になったけれど、繰り上がりで出場している。彼はとても記憶力がよいのだけれど、何かしら障害のようなものを抱えている。
彼のキャラクターには、敗者の痛みも勝者の痛みも包含されています。女性ではオリーブ・オストロフスキー。彼女の家庭は崩壊してしまっている。
「辞書が友達」で、「2番になんてならない」と言い続けていた女の子。けれど大会を通じて、彼女には人に対して"許す心”が芽生えていく。
それまで譲れなかったものへの考え方が変わっていきます。問題を抱えていた子どもたちはみんな、「スペリング・ビー」を通じて一歩を踏み出すという、成長する姿が描かれているんです。
日時:2018年5月23日(水)~27日(日)
場所:東京・六行会ホール
【出演】
河西智美(オリーブ・オストロフスキー)
澄人/町田慎之介(ウィリアム・バーフェイ)
須藤香菜/加藤万葉(ローゲン・シュワルツ&グルーべニア)
杉浦奎介/佐久間雄生(チップ・トレンティーノ)
春日希/小松春佳(マーシー・パーク)
志村知紀/宮原健一郎(リーフ・コニーベア)
浅野実奈子/佐渡寧子(ロナ・リサ・ペレッティ)
川島大典/大野朋来(ミッチ・マホーニー)
柳瀬大輔(ダグラス・パンチ)
菊地まさはる(プレゼンター・他)
菊地まさはる:11月22日生まれ。埼玉県出身。大学在学中から児童・青少年対象劇団での全国巡回公演、鈴木忠志プロデュース’彩の国秋の舞台芸術祭’原田一樹演出「神の庭園」、蜷川幸雄演出「ロミオとジュリエット」、宇治川まさなり演出「スパイダー」、ハマナカトオル演出「野の花」などのストレートプレイを中心に活動。2001年「ルルドの奇跡」からミュージカルの世界へ。代表作に「赤ひげ」「ひめゆり」「タイム・フライズ」「何処へ行く」、東宝ミュージカル「レ・ミゼラブル」、「ミス・サイゴン」、新演出版「レ・ミゼラブル」など。主演作品は「Celebration」「ルドルフの魔法」「トラブルショー」など。俳優以外に、演出家、演技講師、ボイストレーナーとして活躍している。ミュージカル座での演出は、2014年「タイム・フライズ」、2016年「スペリング・ビー」に続いて3度目。