「今でも一番やりたいのは連続ドラマなんです」是枝裕和監督が語る 最新作「万引き家族」と“テレビへの思い”
テレビドキュメンタリーのディレクターを経て、1995年に「幻の光」で映画監督デビュー。以降、「誰も知らない」(2004年)、「空気人形」(2009年)、「そして父になる」(2013年)、「海街diary」(2015年)、「三度目の殺人」(2017年)など、次々と話題作を世に送り出してきた是枝裕和監督。先日はついに、監督最新作「万引き家族」が、世界三大映画祭の一つ、第71回カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドールを受賞。日本映画としては21年ぶりとなる快挙を成し遂げた。今や国内のみならず、世界中の映画ファンが注目する映画作家である彼に、本作「万引き家族」について、また、これまでに手掛けたテレビ作品についても語ってもらった。(このインタビューは、2018年4月に行われたものです)
“犯罪という利害関係”でつながっている家族を描いてみたかった
──監督はこれまでも、「誰も知らない」や「そして父になる」「海街diary」など、“家族”をテーマにした作品を数多く作られてきましたが、今回の「万引き家族」では、どういった家族像を描こうと思われたのでしょうか。
「血縁でつながっていない家族を描いてみたい、というのがまずあって。2011年の東日本大震災以降、『絆』という言葉がブームのように消費されていきましたが、その結果、共同体というものを捉える価値観が、血のつながり重視というか、『やっぱり家族が一番だよね』という考え方に流れていった気がするんですね。僕としては、絆のブームというのは、血縁を超えた共同体が見直されるチャンスだと思っていたんだけど、そうはならなかった。
僕はこれまで、作品の中でいろいろな家族の形を描きながら、家族を形作るのは“血”なのか、それとも“時間”なのか、そんなことをずっと考え続けてきたわけですけど、今回の『万引き家族』では、ちょっと特殊な例ではありますが、“犯罪という利害関係”でつながっている家族を描いてみようと思ったんです」
──作品からは、貧困を生み出す社会に対する怒りも感じられます。
「怒りというより、違和感ですかね。作品に出てくるような貧しい家族を生んでいるのは社会なんだ、という視点は、今ではほとんど失われているでしょ。ここ何年かで『自己責任』という言葉がすごく使われるようになってきて、貧困の問題もその一言で片付けられがちなんだけど、でも、そうではない捉え方をしてみたい、というか。
とは言っても、僕は決して、この作品で正解や結論を出そうなんて思ってるわけではなくて、何かの“問い”になればいいんじゃないかと。この作品をご覧になった方々が、自分の家族だったり、所属している共同体だったりを捉え直す一つのきっかけになればいいなと思っているんです」