歩いてるだけなのに風が吹く
──向井さんの雰囲気も相まって、とても華麗な殺陣や立ち振る舞いですよね。登場すると風が吹いて…。
歩くと風が吹くって、他の人からすると迷惑な人ですよね(笑)。
現場ではでっかいプロペラを回して風を吹かせてるんです。
砂やコンスターチをどんどんまくんで、結構それに苦戦しますね。目が開けられないんです。歩いてるだけなのに風が吹くなんて、ちょっと厄介な人です(笑)。
──殺陣以外の所作で苦労されたことはありますか?
歩き方や座り方の基本的な動作、ふすまの開け方とか、走るときに腕を振らないということにも気を付けました。
あとは、そろばんが難しかったですね。現代のそろばんとは形が違うんです。現代のは上の玉は1つでしょう?下は4つだけど、江戸時代上に2つ、下に5つなので、全部弾くと間違えちゃうし、掛け算と割り算も同時にやらないといけなかったり…。
制作の意向としてそういった細かいところもちゃんとやりたいというのがあったので、そろばんの先生に毎回来ていただいて、吹き替えはなしでやっています。
先生はNHKのドラマを10本くらい担当してらっしゃる方なのですが、吹き替えなしは初めてとおっしゃっていました。珍しいみたいですね、だから大変みたいです(笑)。
──吹き替えなしというのは、ご自身の要望でしょうか?
最初の撮影が1話の初めの場面だったんですが、そこで監督に「いろんな角度で撮りたいんでご自身でやってください」と言われたんです。
僕自身今まで料理や医療を扱った作品に出演してきましたが、吹き替えを使ったことがなくて。もちろん自分自身でやるつもりではありましたが、とても難しかったです。
せりふも含めて全然頭に入ってこなくて。久しぶりに苦労しました。
米の計算だと何合の上が何升とか斗とか、そういう使い慣れない初めて聞く言葉ばかりで…。1話は説明するせりふが多く、しかも、撮影の初日あたりだったので、結構焦りました(笑)。
そろばんに関しておそらく見ている方は実際には分からないと思うんですよね。そろばんって(電卓のように)数字が出るわけではないし、今と計算式が違うし…。例えば4分で1両とか4朱で1両だから3朱あげて4朱の状態だと1回下げて1分に上げないといけなくて…。
なのでやっている側は分かってても、見てる方は分からないかもしれないので、やっている風情やそれを相手に見せる手元だったりとか、そういうことを大切にしたいなと思っています。
──そろばんや立ち回りなど見どころも多い役どころですが、市兵衛をどのように演じていきたいと思われますか?
全部の作品に通じることなんですけど、リアリティーを持ってやるっていうのはどの役をやるにも必要なことだと思うんです。そろばんはそろばん、立ち回りは立ち回りでやるときに集中して。“そろばんを持っているから”ではなくて、1つ1つに集中して取り組んで、それを積み重ねていけば市兵衛という人になっていくだろうって思ってやっています。あまり奇をてらうつもりはないですね。
──現代劇でのイメージが強い向井さんですが、役者として時代劇に思い入れはありますか?
今は時代劇自体が少なくなってきているので、僕に限らず出演者にとっても珍しいことだったと思います。今回の出演者は時代劇を経験したことがないという人が多かったですね。
また、頂いたお話であるっていうのは大前提なんですけど、やっぱりこれは1つの挑戦だなとは思っていて。今、本格的な時代劇はかなり減ってきている中で、期待をしていただけるっていうのもありがたいです。
時代劇特有の所作とか立ち回りとかもあるので、今までにない経験をさせていただいています。毎日が挑戦です。
【後編】では、向井が6月16日から始まる第2部の撮影での裏話や時代劇の魅力についてなどを語る。
毎週土曜夜6:05‐6:45
NHK総合にて放送
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