僕の方がとても助けられました
――鈴愛役の永野さんの印象は?
最初に思ったのが、僕と芽郁ちゃんの接点が、最初はあるドラマのゲスト出演させていただいた時で、僕の次のゲストが芽郁ちゃんだったんです。その次の作品が映画「帝一の國」(2017年)で僕の後輩の恋愛している相手、その後のドラマ「僕たちがやりました」(2017年、フジテレビ系)では友達の彼女役と、徐々に距離が近づいていて、自分でも近づき方がちょっと気持ち悪いかなと思うくらい一歩ずつ一歩ずつにじり寄っている感じで…。鈴愛と恋愛をして結婚をするという役どころだと聞いた時に、「ついにここまでこぎつけたか!」と勝手に感じました(笑)。
これまでの作品では、撮影がそんなにかぶっていなかったのであいさつするくらいしか交流がなかったのですが、今回の撮影ではすごく助けられました。
鈴愛として生きてきた長さ、鈴愛という役に向き合ってきた時間を感じました。近くで見ていて、鈴愛も芽郁ちゃんも、その時感じた感覚を大切にするタイプだと思ったのですが、作りこんでいる部分ももちろんあると思うんですけど、その現場で実際に触れたものやその場の呼吸を拾って演技をされる方なので、彼女のリアルな感情の揺らぎというものを受けて、僕が演じることができたのですごい助けられたなと思いました。
印象的だったのが、鈴愛が泣くシーンで、撮影前は監督と芽郁ちゃんが「泣けるかな」というお話しをしていたんですけど、実際に撮影に入って、涼次と握手をして手の温度を感じた瞬間、蛇口をひねったぐらいの涙がポロポロ流れていて、お芝居中なのに「すごいな」と驚きました。こんなに信じられる涙はないなと感じて、とても頼りがいのある女優さんだなと思いました。
“朝ドラ”のヒロインで、いろいろなプレッシャーがあり、10カ月くらいある撮影スケジュールも大変だろうし、途中から僕が入って、何か少しでも助けることができたらいいなと思っていたのですが、逆でしたね。僕の方がとても助けられました。
――ご自身が涼次に共感したり、似てるなと思うところはありますか?
涼次の鈴愛への告白のせりふは、全てを表しているなと思っていて、律の「傘に落ちる雨の音なんて、そんなに素敵じゃないから、片方くらいでちょうどいいよ」というせりふがあるんですけど、涼次は「(傘を差さず)空の下に立てば、両方雨降ります!」と鈴愛に言うんです。僕自身は、涼次の感覚に近いかなと思います。あと個人的なことですけど僕も雨の日に傘を差さないのでなんかそれは共感できますね(笑)。
――鈴愛と涼次はお互い、どういうところにひかれたんだと思いますか?
例えば僕は北川さんの書かれる脚本が好きなんですけど、その脚本を好きということは、自然的にその人自身が好き、ということに繋がる部分があると思っていて、そこまで北川さんご自身(のパーソナルな部分)を知っているわけではないですけど、きっと北川さんの人柄も好きだと思うんです。
なので、涼次が「楡野スズメ」という漫画家の漫画が好きでファンであることが前提にある中で、「100円ショップ大納言」で出会った鈴愛ちゃんの波長や言葉、一緒にいる時のリズムが合ってひかれていったのではないのかなと思います。
元々、自分の好きな落ち着く楽しいリズムを持っていて、話すスピードや話す口調、会話のラリーのテンポが最初から心地がいいなと思っていて、そこから徐々にひかれていたのかなと。
そして、出会って間もない頃に涼次は鈴愛ちゃんから「漫画家を辞めたんです」と明かされているんですが、鈴愛ちゃんが弱い部分を見せてくれた、鈴愛が自分に打ち明けてくれたことで、憧れの漫画家さんから一人の女性として見ることができるようになったのかなと思います。
――涼次がひかれる鈴愛の魅力は何だと思いますか?
鈴愛は、北川さんが描かれたせりふが持つリズムと、芽郁ちゃんが持つリズムがブレンドされているようなキャラクターで、そのブレンドされたリズムがすごく魅力的だなと思うんです。
北川さんが書かれたキャラクター像と芽郁ちゃんのキャラクターが合わさって、誰とも似つかないヒロインになっていると思うので、僕はすごく好きだなと思いました。
僕、今までお芝居で恋愛をしてきていなくて、ピュアな恋愛をしているような役をやってこなかったのでその方法がわからないというか…(笑)、ある意味役者としては恋愛素人みたいなところがあるので、芽郁ちゃんの演じる鈴愛を信じようと思ったんですけど、鈴愛が頼もしすぎて信じざるを得ない状況になり、おんぶに抱っこでやらせて頂きました。
今回、涼次という役は鈴愛の目には格好よくは映るけど、何か格好いいことを言ったり、男としての魅力を見せつけるようなシーンはあまりないので、鈴愛と同じ目線に立って、横に立って、一緒に楽しい時間を作っていく人だなと思いました。
そういう人物なので、演じることに照れ臭さはあまりなかったのですが、鈴愛を抱き締めて告白をするシーンは、撮影して映像チェックしている時に、「(役者を)10年やっているけど、こんな自分初めて見た」という感覚になりました。
今まであまりやってこなかった分、「半分、青い。」を機に、どしどし恋愛する役を募集中です!(笑)