「“テレビ屋”の下世話な感覚」を持つクリエイターを育成中【放送作家集団「SACKA(サッカ)」代表・山谷和隆氏】
時代が巡り巡って、“作り込んだもの”がもう一度支持される時代が来るはず
――そして、放送作家集団のSACKAを2017年に設立されたわけですが。SACKAは、どういった活動をされている会社なのでしょうか?
「僕はIVS時代から、ディレクターでありながら企画立案担当みたいなところがあって。もともと企画書を書くのも好きなんですよ。そういうスタンスで25年以上やってきて、これまでに少なく見積もっても、2000本くらいの企画書をテレビ局に提出してるんですね。だから、今SACKAとして作っている企画書も、その2000本のストックをベースにしています。要は、それをどう現代風にアレンジするかなんですよね。例えば料理番組でも、『歴史上の偉人が食べたのはこんな料理だった』とか、以前にもそういう番組があったじゃないですか。それを『政治家が愛する○○料理』とか、『戦国武将が食べた○○飯』とか、パッケージを変えたら今でも、いくらでも考えられるわけですよ。ですから、その2000本の企画という財産を、今後いろんなところで活かせるんじゃないか、活かしたいなと思ってSACKAを作ったんです。
それと、新人の放送作家やクリエイターを発掘して育成していきたい、という思いもあります。バラエティーの世界もどんどん世代交代が進んでいて、例えばディレクターだったら、プロデューサーになるとか、割と進むべき道は考えられるんですけど、放送作家というのは、スポーツ選手みたいなもので、体力的なことも含めて、活躍できる期間が比較的短いんですね。ですから、放送作家たちそれぞれの才能を僕らがちゃんと評価して、彼らが次のステージに進んだときに、その才能を活かして食べていける、というようなモデルケースを作るとか、そういうことをSACKAでできないかなと思っているんです」
――現在、何名が所属しているんでしょうか。
「今、4名が所属していて、新人も募集しています。将来的に売れる作家を育てたいなと思っています。
今、テレビ以外にも、映画とかCMとか、地方活性化とか、いろんなところから仕事のオファーがあるんですよ。広告代理店や映画会社の人と話していて思うのは、僕ら“テレビ屋”の下世話な感覚って、他の分野でも活かせるんだなって(笑)」
――では最後に、“テレビの未来”について、ご意見をお聞かせください。ずばり、テレビ界は今後どうなっていくと思われますか?
「コンテンツそのものは、テレビ局以外にも、いろんなところで、いろんな人が作るべきだと思いますし、優秀なクリエイターがたくさん出てくるのは歓迎しますが、今はネットやゲームの業界に優秀な人材をどんどん持って行かれているっていうのが、ちょっと悔しい感じはしますね(笑)。でも本当に、今こそわれわれは、いかに若い人たちをテレビに呼び戻すかを真剣に考えなくちゃいけないと思うんですよ。そのためにも、『テレビってこんなに面白いんだよ』『これほど人に笑いや感動を与えられるんだよ』ということをもっと世に知らしめたいですね。
また近年は、先ほどもお話しした通り、“リアルなものをどうアレンジするか”に長けたテレビ番組がヒットする傾向にあると思うんですが、例えば今、インド映画の『バーフバリ (王の凱旋)』や『ダンガル (きっと、つよくなる)』など、設定やストーリーをオーバーに作り込んだものがウケていますよね。僕としては、そういった“作り込んだもの”が、時代が巡り巡って、もう一度支持される時代が来るんじゃないか、という気がしていて。まぁ、そういう時代になってくれないと、われわれクリエイターの出番はなくなる一方ですし(笑)。その意味では、今後、クリエイターの世間的な地位を高めていくのも大切なことだと考えています」
なお、山谷氏が代表を務める(株)SACKAでは、放送作家・クリエイターを随時募集している。