エモいバトル連発& ドラマティックシーン多数! アニソンダンスバトルの祭典「アキバ×ストリート5」
アニソンでブレイクダンスを踊るエンターテインメント集団RAB(リアルアキバボーイズ)主催のアニソンダンスバトル全国大会"アキバ×ストリート5"のFINALが、9月30日(日)に新宿BLAZEで開催された。
アキスト5 FINALへの切符を手にしたのは、ニコニコ超会議、東京、名古屋、大阪、福岡、北海道、当日予選大会を勝ち抜いたバトラーに、前年優勝者のゾマやかじゃない! を合わせた8人の猛者たち。そして、当日16組が参加したクルーバトルも行われ、アキスト5ファイナリスト以外にも多くのアニソンを愛するオタクダンサーたちが新宿に集結した。
当日は大型台風が関東圏に上陸することもあり、バトラーやオーディエンスの参加に影響が出るかと思われたが、開場早々にダンサーとオーディエンスでフロアは満員に。さらに、この日はLINELIVE公式放送でバトルとゲストライブの模様が生中継され、最高視聴者数2万人という異例の記録を叩き出した。
多くのオーディエンスとリスナーに見守られたアキスト5
DJの流す間違いないアニソンのプレイやMCの煽り、曲が変わるたびに大歓声をあげるオーディエンスの熱量は、A-POPシーン(アニソンダンスシーン)ならではの盛り上がりだ。フリードリンクとして提供されたライフガードを片手に全員で「ウェーイ!」とパーティー感覚でイベントを楽しむ光景は、シーンの熱量の高さと勢いを感じさせる。
そんな最高のシチュエーションで繰り広げられたバトルの模様を決勝戦をメインにレポート!
もはやショーケース!? あの大物ダンサーも参戦!
ソロバトルと並行して開催されたクルーバトル。キッズから大人までの幅広い年齢層のダンサーが全国から集結し、全16チームによる熱いクルーバトルが繰り広げられた。
バチバチのバトルであるが、純粋にフロアに流れるアニソンに合わせて自分の好きなダンスやパフォーマンスを見せ合うというセッションやショーケースにも近い戦いが繰り広げられていたのが印象的。
その中で決勝の舞台に上がったのは、準決勝でソロバトルのファイナリストを2名擁する"たかまり戦隊ハイランダー"を倒した"コミヤトロン"と、個性的すぎるメンバーが多い"最後のゴーヤ祭"を倒した"東向島abboyz"となり、B-BOY同士のクルーバトルとなった。
このバトルをレポートする前に、触れておきたいことがある。
コミヤトロンのメンバー名を見てみると"うぃんぐぜろ"とひらがなで書かれていた。まさかと思ったが、そのまさかだった。世界トップクラスのブレイクダンスチームであるFONDNATIONからWINGZEROが参戦していたのだ!
前年のアキスト4の覇者であるゾマやかじゃない! を擁する東向島abboyzが一見有利に見えたが、これで前評判など頼りならない、B-BOYたちの予測不能なバトルが繰り広げられることになった。
さまざまなアニソンがかかり、B-BOY同士らしいブレイキンバトルが繰り広げられるなか、大きく両クルーの個性を分けたのは3曲目にかかった『となりのトトロ』ではないだろうか。
コミヤトロンが、シャツに両膝をしまって丸くなってトトロを表現したり、ほのぼのとしたサウンドに合わせて和やかに遊ぶのに対して、東向島abboyzはめまぐるしくメンバーチェンジをしながらパワームーブ満載のブレイキンで攻め立てる。
ブレイカー同士が同じ曲で踊っているのに、こうも方向性が変わるのかと感心してしまうほど、非常に面白いバトルシーンであった。笑いあり感動ありの熾烈なクルーバトルを制したのは、アキストのクルーバトル初出場のコミヤトロン。
「仲のいいメンバーと初優勝できて嬉しい!」と喜びの声をあげていた。
誰が優勝してもドラマがある! 泣けるくらい感動するバトルを制したのは?!
数々の名勝負が生まれた全国予選を勝ち抜いたバトラーによる戦いもついにこの日でラストを迎える。8人のファイナリストの中で決勝戦に駒を進めたのは、当日予選を勝ち抜いたネスと名古屋予選を優勝したSHINSUKE(Beat Buddy Boi)のカードとなった。実は名古屋予選の準決勝で一度対決をしている両者。その時はSHINSUKEがネスに勝利したが、勝負はやってみないとわからないもの。ネスにとってはリベンジマッチとなった。
タヲるん、ゾマやかじゃない! を倒して決勝に上がってきたネスは、バトル前に「タヲるん、ゾマやかじゃない!、SHINSUKEの3人は過去に戦って自分を変えてくれた人。アキストで自分は変われたので、今度は優勝してアキストを自分が変える」と思いの丈を話していた。
対するSHINSUKEは、りょ→、HIDEという強敵を倒して決勝に。ストリートダンスのトップクラスにいるBeat Buddy Boiのメンバーである彼の実力を持ってすれば順当と言える勝ち進みなのかと思われたが、本人はそう思っていないようだ。「ここまでバトルしてきたけど、一回も勝ったと思えるバトルはなかった。アニソンダンスのソロバトルは負けてきたし、こないだの名古屋の時とはまた違うものになる。負けてきただけに勝って一旗あげたい!」と自分は挑戦者であり、どうしても優勝したいと意気込みを語っていた。
そんな、優勝を譲れない両者の想いが交差したファイナルバトルがスタート!
DJ syu-Gが1曲目流したアニソンは、ガンダムビルドダイバーズのOP曲『Diver's High』。この楽曲といえば、アニソンであると同時に日本を代表するラッパーの一人であるSKY-HIの新曲でもある。決勝の舞台で日本のトップラッパーが歌うアニソンを出すというセンスは、アニソンのダンスバトルであるが、レベルもストリートダンスシーンに負けないものなんだ。そういう戦いを見せてくれというメッセージにも聞こえてきて、とても胸が熱くなる。そこに、イントロがかかった瞬間に鳴り響くオーディエンスの大歓声が加わり、のっけから熱くエモい空気感が会場を支配していた。
先陣を切ったのはアニソンダンスシーンにはあまりいないHIPHOPを得意としているSHINSUKE。楽曲を知り尽くしているかのようなタイミングで、効果的な場面で音ハメと歌詞ハメをキメていき、オーディエンスから歓声を集める。
一方、腕の関節で角度を作りながらさまざまな形を作り展開していく繊細なタットを得意とするネスは、まるで音ゲーの波形を見ているかのようなタッティングで攻め立てる。印象的だったのは、ここまでのバトルではタット以外にも歌詞ハメを意識した身体表現を行なっていたが、 SHINSUKEとのバトルではタット重視で戦っていたところだろうか。
2曲目の紅殻のパンドラOP『hopeness』が流れるとバトルは最終局面へ。
SHINSUKEが、楽曲のうねりに合わせたムーブを使い始め、HIPHOPらしいダンスでネスに追い討ちをかける。アニソンダンスバトルであるが、自分のレペゼンしているダンスジャンルやグループの色を忘れずに出してくるのはさすがプロダンサーでありアーティストだ。こだわりを持ってアキストに挑んでいるのが伝わってくる。
対するネスは、SHISUKEに接近して踊り出すなど、徐々に感情が高まっていくのが見ていてわかる。そして、ついに楽曲が大サビで音が転調すると、一気に感情が爆発。タットだけでなく全身を使ったムーブで自身の想いをすべて解き放つようなエモいダンスで踊り切った。
お互いの立場や想いがぶつかり合ったバトルは、鼻の奥がツンとくるような思わず目に涙が浮かんでしまいそうなエモさを感じる一戦に。どちらが勝つのかもはや分からない内容に、ジャッジの判定も難航していた。そして、ついに運命のジャッジが下される。
最後に勝ち名乗りを上げたのは、地方予選で敗退し、最後の当日予選でファイナリストの座を手に入れたネス!
RAB(リアルアキバボーイズ)に憧れたことをキッカケにA-POPシーンに足を踏み入れたネスが、ずっと挑戦してきたアキストで悲願の優勝を手にした。
イベント総括
筆者の主観であるが、ネスの優勝した姿を見ると、この優勝はバトルの優劣で決まったというよりは、どちらが優勝した方がアキストとしてシーンが面白くなるのかという深い部分まで話し合われたのではないかと感じた。バトルの勝敗ではなく、アキストというブランドをかけた戦いに勝利したと表現すればいいだろうか。改めてアキストに挑むすべてのダンサーにドラマがあって、そこから生まれるエモさこそアキストの素晴らしい部分なのだと感じさせてくれた結果であった。
LINE LIVE公式やRAB以外のメンバーをジャッジに加えるなど、新しい試みを取り入れながらパワーアップして開催された"アキバ×ストリート5"。今年新たに生まれたコンテンツやダンサーのドラマが、来年の"アキバ×ストリート6"にどのように繋がっていくか楽しみである。
撮影●AYATO. 取材・文●のざたつ
《アキバストリート5 結果》
【ソロバトル】
優勝:ネス
準優勝:SHINSUKE
【クルーバトル】
優勝:コミヤトロン
準優勝:東向島abboyz
アキバストリート公式サイト:http://akiba-street.jp/