作品賞は「義母と娘のブルース」 2日がかりの感動シーンとは!?【ドラマアカデミー賞】
2018年夏(7~9月)クールに放送されたドラマを対象に開催した「週刊ザテレビジョン 第98回ドラマアカデミー賞」で、綾瀬はるか主演の「義母と娘のブルース」(TBS系)が最優秀作品賞に選ばれた。
キャリアウーマンの亜希子(綾瀬)が、結婚相手・良一(竹野内豊)の連れ子・めぐみ(横溝菜帆/上白石萌歌)と親子の絆を築いていく感動作。「不器用ながらも家族のために懸命に奔走する亜希子の姿に、笑いと感動をもらった」という声や、良一が亡くなる中盤から物語がガラッと変わる構成を評価する声が挙がった。
そんな同作を手掛けた飯田和孝プロデューサーに、作品に込めた思いや出演者たちの魅力について聞いた。
――作品賞を受賞された感想を聞かせてください。
娘を愛した義母の大きな意味でのラブストーリーという、シンプルかつ温かい話で受賞できたのが素直にうれしいです。7月クールなので猛暑の中、キャストもスタッフも頑張りましたが、それだけではなく、ロケをさせていただいた(東京都大田区の)大岡山商店街の皆さんのご協力も大きかったです。撮影が進むにつれ、商店街で声をかけられることも多くなり、ドラマが認知されてきたという実感がありました。
――視聴率が初回11.5%からぐんぐん上昇し、最終回では19.2%を記録しました。現場の反応はどうだったのでしょうか?
もちろん現場は盛り上がりますが、どちらかというと「ちゃんと伝わっている」という感覚を持った感じでしたね。今回の「義母と娘―」のような日常を描くドラマは、演じ手のちょっとしたしぐさや声のトーン、作り手の裁量で伝わり方がガラッと変わってしまうものだと思いますので。
――主演の綾瀬はるかさんはコミカルな場面で笑わせ、シリアスな場面では泣かせる演技が評判になりました。
綾瀬さんはふだん、自然体の人ですが、誰よりも役のことを考えていて、その探究心はすごいものがあります。現場でも常に自分を過信せず、「今のお芝居は亜希子さんとしてどうだったか」と確認していました。第1話で綾瀬さんが“腹芸”を披露する場面に驚いた視聴者の人も多いようですが、ご本人はあくまでも「亜希子さんのキャラクターとしてのビジネススキルの一環」という捉え方だったのではないでしょうか。おなかのペイントは特殊メークの専門家に依頼し、綾瀬さんもおなかのペイントがよく見えるようにスカートのラインを下げるなどの工夫を加え、あのワンシーンに対して一生懸命向き合っていました。
――麦田役の佐藤健さんは、前半でいろいろな仕事をしているフリーターとして登場し、後半ではパン屋の店主として亜希子と出会います。佐藤さんの演技はいかがでしたか?
佐藤さんも役への向き合い方が徹底していて、そこは綾瀬さんと共通しています。探究心がすごいですし、現場で生まれた感覚をすぐアウトプットとして表現できる俳優さんです。また、麦田のニカ~っと笑う屈託のない顔がいいんですよね。第9話、前半での麦田と亜希子さんとの接点をプレーバックしていく居酒屋の場面はクライマックスで、「この瞬間のために今までドラマを作ってきた」と思え、感慨深かったです。
――みゆきの小学生時代を演じた横溝菜帆さんの演技も評判でしたが、キャスティングの経緯を教えてください。
菜帆ちゃんはオーディションで選びました。目が強かったのと、演技の経験はほとんどなくても感情が伝わる芝居のできる子だと思いました。台本を読むのではなく、ちゃんと相手の言ったことに悲しくなったりうれしくなったりしてからセリフが出るんです。3月に決まってクランクインの5月までほぼ毎日、学校が終わってからTBSに来てもらい、リハーサルを兼ねて芝居の稽古をしました。すごく頑張り屋さんで、撮影が始まってからも日々成長していきました。高校生のみゆきを演じた上白石萌歌さんと似ているとも言われましたが、顔が似ているからという理由で菜帆ちゃんを選んだわけではないんです。
――特にこだわりがあった、苦労された場面はどこでしょうか?
第5話、良一のお葬式でみゆきと亜希子が抱き合って泣くシーンでしょうか。2日間をかけて撮影しました。給湯室でみゆきが初めて「お母さん」と呼ぶシーンで、菜帆ちゃんが涙を流すまでの表情がとても大事なので、そこは制作側の思い入れもありました。「OK」が出た瞬間、綾瀬さんは菜帆ちゃんを「よく頑張ったね」とねぎらっていました。それが菜帆ちゃんのクランクアップでもありましたが、最終回、亜希子がみゆきに自分の生い立ちを告白する場面でも、同じように綾瀬さんが上白石さんに声をかけていて、本当に親子のようでした。
――この作品で成し遂げたことはどのようなことだと思いますか?
血のつながらない母と娘が頑張って親子になろうとする。そんな2人とそれを支える人たちの愛の形を描きたいというのがそもそもの企画意図でした。このドラマでは「こうあるべき」ということはひとつも言っていません。義理の親子だけでなく、いろんな家族の形があっていいはずですし、このドラマを見てくださった人たちが自身の置かれている状況を楽に考えることができたらと思っています。
取材・文=小田慶子