藤井聡太七段が佐藤天彦名人と地元・名古屋で対決!「得がたい経験をして成長できた」
昨年好評を博した「囲碁・将棋チャンネル PRESENTS 将棋プレミアムフェス in 名古屋」が、今年も12月9日に開催。愛知が生んだ将棋界のスーパースター、藤井聡太七段がタイトルホルダーに挑んだ。対戦相手の佐藤天彦名人は「名人戦」3連覇中の実力者。今年は囲碁将棋チャンネル主催の持ち時間が少ないテレビ棋戦「銀河戦」でも優勝し、早指しでも強いことを証明したトップ棋士だ。解説は、初タイトルを獲得したばかりの斎藤慎太郎王座が務めた。今年は昨年よりもさらに大きな会場で行われたが、チケットはたちまち完売。大勢のファンを前に、さすがの藤井七段も緊張した様子を見せた。
対局に先駆けてトークショーが行われた。前半は藤井七段に加え、師匠の杉本昌隆七段、杉本門下の女流棋士・中澤沙耶女流初段、一門によるリラックスムードで始まった。会場のファンからの質問で「ズバリ、好きな女性のタイプは?」と聞かれた藤井七段は「一番困る質問が来てしまいました」と苦笑いし、「今は保留」とした。杉本七段は師匠(故・板谷進九段)からの流れをくみ、師弟でものを言いやすい雰囲気を目指しており、藤井七段や中澤女流初段からも父親のように慕われている。そして一門の伝統で、師匠から未成年の弟子にはお年玉が渡されるという。藤井七段は棋戦優勝を果たし、段位も師匠に追いついてしまったが、まだ16歳。2019年のお正月もお年玉はもらえる予定だ。
後半は佐藤名人、斎藤王座、山口恵梨子女流二段によるトーク。ファッションをはじめ多くのこだわりを持つ佐藤名人だが、タイトル戦の食事は意外にも庶民派。無難にカレーやショートケーキを選ぶようにし、それほど多くはないがチェーン店などに入ることもあるという。また、斎藤王座は店での食事の際の対応など、タイトルホルダーの先輩の経験を聞いて参考にしたいと語った。
続けて目玉の特別対局が行われた。藤井七段と佐藤名人は公式戦で一度だけ対戦している。2018年1月に第11回「朝日杯将棋オープン戦」の準々決勝で、当時四段の藤井が勝利し、中学生が名人に勝ったと話題になった。その後、準決勝で羽生善治竜王、決勝で広瀬章人八段に勝って初の棋戦優勝を飾っている。今回は「銀河戦」と同じ持ち時間が少ない、スピーディーな対局。
対局は両者が得意とする、双方の「角」を取り合い「銀」を「歩」の上に移動させる「角換わり腰掛け銀」の戦型に。佐藤名人の攻めにうまく対応した藤井七段が優位に立ち、何とか勝負に持ち込もうと佐藤名人も暴れにいくが、藤井七段が落ち着いて対応。リードを広げ、最後はしっかりと勝ちを読み切った。堂々たる指し回しで佐藤名人の攻めを余しての勝利となった。
昨年の久保利明王将との対局に続き2年連続、地元のファンの前でタイトルホルダーを倒し、あらためて成長した姿を見せつけた。「追い上げられる中でも冷静さを失わずに指すことができました。得がたい経験をして成長することができた一日です」と、藤井七段らしい謙虚な感想でイベントを締めた。
文=HOMINIS編集部