<試写室>「トレース―」“感情”揺さぶる役者の演技、二転三転するストーリーの妙が心地いい
独断と偏見のレビュー
「科捜研の女」世代としては、このドラマのタイトルを初めて聞いたとき、つい食べていたリッツを落としてしまったくらい驚いたものだが、いざ第1話の冒頭を見て、そんな感情に流されちゃいけない作品だとすぐに悟った。
ここまでの4話を振り返ると、船越演じる虎丸の“刑事の勘“をもとにした決めつけからのミスリードに始まり、新木演じるノンナが感情にほだされてアタフタし、外野がやいのやいの言って真相が分からなくなり、それを冷静な真野が決定的な証拠でグウの音も出ないほどだまらせる、という“黄金の方程式”が軸にあった。
ただ、無理にまとめればそういうパターンっぽくなっているからといって決してマンネリだとは思わないのは、二転三転、いや四転くらいするストーリー展開と、ブレないメインキャラクターの魅力、そして各話ゲストの熱演、個人的には音楽も大きい気がする。
そんな中、今までどちらかといえばゲストより錦戸・船越のバッチバチ具合の方が気になってしまったが、第5話ではその要素がややマイルドだったように思う。
事前に情報で出ていたように、今回は矢田亜希子と山本舞香がゲストとして登場し、大きな存在感を放っている。
矢田の演技が素晴らしいのはあえて言うまでもないが、第5話で特に心をグワシと鷲づかみにされたのは、“鳥取が生んだ奇跡の美少女”こと山本舞香だ。
いや、正直そんな形容詞で美貌だけ褒めるのは失礼なくらい、表情豊かで、ある時は柔和な笑みを、ある時は厳しい目付きにキツイ口調、そしてある時は感情をどこに置いてきたの?ってくらいのクールさ…。
これまでいろいろなドラマや映画で彼女の演技を見てきたつもりだが、ここまで感情を動かされたのはこのドラマが初めてかもしれない。今さら声を大にして言うのも憚られるが、今後とんでもない女優になるんじゃなかろうか。
ただキレイなだけ、かわいいだけの女性はいくらでもいるかもしれないが、それだけじゃない何かを秘めている気がする。そりゃ月9に出るレベルの女優だから当たり前なのかもしれないが、その中でも特に言葉ではうまく表せられないズバ抜けた魅力がある。
素人がこれ以上言っても何の説得力もないから控えるが、もし自分が映画監督になったとしたら、間違いなくずっとメイン級で使いたい女優さんの一人だ。
そして別に媚びを売るわけでも、とってつけたわけでもないが、やはり“座長”錦戸演じる主人公・真野の魅力があってこそ飽きの来ないストーリーが紡がれているのは間違いない。
原作を知らないのでこれは完全にドラマだけを見た主観だが、真野は単純にクールで仕事ができる男というより、本当は人情味あふれる人間なのに冷静な判断をするために感情をひたすら隠しているように見える。
ちょくちょく見せるノンナへの雑な扱いからの優しいフォロー、解決した後につい漏れてしまう柔和な表情、真実を知るためと言いつつ同僚の名誉のために奔走するツンデレ感、きっとこの先、真野の過去や意外な一面が明らかになっていくのだろうが、それも楽しみだ。
回を追うごとに“感情型突っ走り系刑事”(失礼)の虎丸の信頼度が目に見えて増しているのは、そんな真野の隠しきれていない人間力によるものなのではないか。
同時に、演じる錦戸の古き良き“サムライ”然とした存在感が存分に生かされたキャラクターであるともいえる。
その他、ジャニーズさんの人気ドラマ音楽を多数担当してきたKen Arai氏によるクラシックと最新のデジタルサウンドを融合したかのようなソソる音楽は気分を高揚させてくれるし、本人は硬派でおとこ気あふれる男だが悪そうなヤカラをやらせたら右に出る者はいない石垣佑磨も安定のクオリティー。
あとは新木演じるノンナが毛髪を抜かれて「いってぇ!」と言ったシーンにグッときた。あれってガチのリアクションなんじゃなかろうか。
ノンナだったら「いった~い」って言っちゃいそうなものを、「いってぇ」って(笑)。いたって真面目な場面なのに、ここは笑わせてもらった。
相変わらず長々と不毛な感想をつづってしまったが、正直第5話で唐突に試写記事を書くのってなかなか難しい。
それでも指が勝手に動いてここまできたのは、「トレース」第5話の映像を見たときに受けた“感情”のおかげにほかならない。
真野サンが読んだら間違いなく「キモチワルイ」って言われるくらい主観だらけの記事だが、やはり感情というのは人間が生きていく上でうまく付き合っていかなければならない大事な存在なのだ。
だって、この記事から感情の成分を抜いたら優秀な科捜研の研究員でも何のトレース(痕跡)も見つけられないぜ?
いや、そろそろ冷静に分析しろ。
文=人見知りシャイボーイ