脚本賞は「大恋愛~僕を忘れる君と」 大石静氏が「勝てる!と思った」瞬間【ドラマアカデミー賞】
第99回ドラマアカデミー賞で脚本賞を受賞したのは、「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS系)を手掛けた大石静氏。「若年性アルツハイマーという病気に配慮し、かつ恋愛ドラマとして最大限に盛りあげた手腕」などに評価が集まり、「自立した女性像に戸田恵梨香がハマった」という声も。そんな大石氏に今作で描きたかったことや、主演女優賞を獲得した戸田恵梨香とその夫役で好評を得たムロツヨシのコンビについて聞いた。
――ドラマアカデミー賞で脚本賞を受賞されました。今作で描きたかったことと、執筆の際にご苦労されたことを教えてください。
「大恋愛―」では、人が人を愛する素敵さと、病という不運や命の刹那という両極端な人生の側面を、綾なすように描きたいと思いました。この作品に限らずいつも思うのですが、難しいのは「悲劇と笑いを両立させること」ですね。
――特に、悩まれたシーンはありますか?
第1話に、尚(戸田恵梨香)と真司(ムロツヨシ)が居酒屋の店員さんにアテレコをして遊ぶシーンがありますが、あれも「どうしたら、一緒にいて楽しくて仕方がないということが描けるか」をみんなで話し合いました。アテレコをするというアイデアが出てからも「何を言わせたら面白いだろう」と頭を悩ませましたね。どうしたら幸せが描けるのか、そのことを考え続けた作品でした。
――主演を務められた戸田恵梨香さんも最優秀主演女優賞に選出されました。戸田さんの演技はどのようにご覧になっていましたか?
戸田さん、ムロさんのコンビをキャスティングできたことが、成功の鍵だったと思います。戸田さんは昔から上手い女優さんだと思っていて、ずっと一緒にお仕事したかったので、光栄でした。病を患う前後の演じ分けは素晴らしかったですが、驚きよりも、彼女ならやってくれると信じていた部分の方が大きいですね。
――ムロツヨシさんの好演についてはどのようにご覧になりましたか?
ムロさんの芝居は、細部まで計算しつくされていて、直感派というより理論派だなと思いましたが、それを感じさせない所がスゴイです。キャスティングが決まってお目にかかった時、よく見ると目も鼻も口元も美しく、色気もあり、正に真司だと思いました。ハマるべくしてハマったという感じです(笑)。
正直、私自身もキャスティングが決まる前は、いわゆる2枚目の俳優さんが来るだろうと思って書いていたのですが、プロデューサーから「ムロさんがつかまるかも」と聞いたときは「それなら勝てる!」と思いました。
――尚と真司だけでなく、尚の母・薫(草刈民代)と、尚の元婚約者・侑市(松岡昌宏)が結婚する展開にも注目が集まりました。2人の結婚を描いたのはどういった意図でしたか?
私はいつも、俳優さんにも「この作品に出て良かったな」と思ってもらいたくて、脚本を書いています。俳優さんだけでなく監督さんもスタッフさんも、チームが幸せになることが大事だと思うんです。
だから、薫も「子供が病気になって辛い母親」というだけでなくて、こんなにきれいなのだから途中で恋でもしたら、草刈さんに「すてきな役だな」と思ってもらえると思って書きました。松岡さんも同じで、ただ振られた優秀な医師というだけでは、彼もつまらないだろうと思ったんです。そんなことを考えているうちに2人がくっつくというストーリーが浮かびました。
ずっと甘えられなかったお母さんが、年下のすてきな彼氏を得たという結末は、夢があって良かったなと思います。