ポップな要素みたいなものを加えられれば
――大河ドラマに外部の演出家が参加するのは初めての試みとのことですが、他との違いは感じましたか?
僕は根無し草というか、ジャンクな性格なので、深夜ドラマや民放のゴールデンドラマ、映画、舞台、書き物をしたりいろいろやるんですけども、「NHKのドラマだからどうこう」っていうものは思ったよりなかったですね。脚本があって役者が演じて、それを撮るっていう形においてはどこも変わんないですし。
ここ数年のテレビドラマの中でも、NHKのドラマは、本当に“いちテレビ好き”として、「すごい作品が生まれているな」って思っていたので、それがどういうシステムで、どういう仕組みで、作られているのかを見てみたいっていう気持ちもあったので、今は逆に勉強している感じもあります。
あとはシンプルに「美術がすげぇな」って思いますね。普通の映画やドラマだと、スタッフクレジットって“撮影”が一番最初にくることが多いんですけど、NHKのドラマってまず美術なんですよね。
「なんでだろう」って思ってたんですけど、それがすごく象徴しているなと思います。もちろん撮影部、照明部、録音部とどのセクションも素晴らしい仕事をしていますけども、美術はNHKの歴史がぎゅうぎゅうに詰まっているセクションだなって思いますね。
――外部から参加していることについてはどのように思いますか?
外部から参加しているのは僕だけじゃないですよ。VFXだったら、映画界では特撮の時代からずっとやってるプロフェッショナルで、「シン・ゴジラ」(2016年)とかもやっている尾上(克郎)さんが入っていますし。タイトルバック映像でも、「劇団☆新感線」とかの舞台の映像をやってきた上田(大樹)くんがディレクションしていたり。
これまで大河のシステムとは違って、各セクションに外部からスタッフが参加してて、そういう形で新しい大河ドラマを作ろうというふうにしているんだなと思ってます。
それはチーフ演出の井上(剛)さんの意図だと思うんですけど、その中で自分は外部からの演出家として何ができるかということは、考えたりしています。
――大根さんならではのこだわりとかはありますか?
チーフではなく、サブで演出をやるのも久々だったので、演出に集中してできるっていうことがうれしくて、楽しみでした。今はやってますけど、楽しいです。
いわゆる映画監督とかチーフ演出って、全体のクオリティーを管理するために、いろんな責任を負わなきゃいけない立場なんです。でも今回は全体をやらなくてもいいですし。
で、何を求められてるのかなって考えた時に、僕がこれまで深夜ドラマとかテレビ、映画で、やってきたことはエンターテインメントだし、ポップなものなんですよね。抽象的な言い方になっちゃいますけど、ポップな要素みたいなものが、これまでの大河には見られなかった部分で、(僕が)加えられればなって思いました。
――「いだてん」の魅力ってどんなところだと思いますか?
僕はなるべく日曜夜8時にリアルタイムで見るようにしていますが、撮影に参加しているので、どうしても視聴者の目線で見るのは難しいですね。
でも、まぁ現場も見てますし、内容も知ってるんだけども、「ようこんなことやってるな」って、呆れるやら、驚くやら…どのカットを見ても情報量が詰まっているんです。
ここ最近、宮藤さんが手がけた何本かのドラマは、ものすごく緻密な構成になっていて。普通の民放で全10話〜12話くらいの、1クールのドラマだったら、伏線回収とかも「なるほどな」って感じですけど、これを一年間で全47話かけてやってんのかっていう、宮藤さんの脚本の仕掛けにも驚いてます。
あとは、僕もそんなに詳しくはないんですけど、NHKって時代劇だとある程度「この時代のこの家はこの骨組みのセット」っていうのが決まっているらしいんですよ。それがいわゆる、大河ドラマを作るメソッドになっているという。
だけど今回は近代劇ということで、これまでのメソッドがまったく通用しないものなので、一から新しいもの作ってる。っていうのが、テレビ好きな自分の視点から見ても、ビンビンに伝わってきて、毎回すごいことやってるなって思います。