<試写室>「トレース―」人を“信じる”ことは簡単そうで難しい
いよいよ最終章か…!
一話完結のテイストながらもずっとこの作品の縦軸で描かれてきた真野の“陰惨な過去”にまつわる話が、新たな展開を迎える今回。“最終章”に入りメインキャストたちの人間模様がどうなっていくのか、という面でも注目の回だ。
ここまで来たらそれぞれのキャラクター説明は不要だから省くが、一カ月前に第5話の試写記事を書いたときに触れた以上に、真野ら科捜研のメンバーと虎丸の信頼関係が強くなっているのは明らかだ。
特に今回は虎丸のややスタンドプレー気味の捜査に対して、それぞれの思いで力を貸し、一致団結する。
「チョロいな」と言われるかもしれないけど、やっぱり筆者のような人肌恋しいおっさんは一つの方向に向かってこうやって大人たちが一致団結する、っていう描写が大好き。虎丸のボソッと言ったある言葉にもウルっときてしまった。
前々から思っていたが、真野と虎丸はタイプがやや違うが、共に“職人”気質という点では似た者同士なのではないか。
だからこそ、表面上はともかく深い位置で認め合う部分があるようで、一度信頼したら何があっても信じてしまうのかもしれない。
今回真野がピリピリモードのとき、結構厳しい言葉を虎丸に投げてしまうのだが、第一話の時だったら確実に言い合いになるところでも、意外なリアクションを見せたのもどこか納得。この二人の関係、この先も見守りたい。
また、あの美しい顔につられて油断していたときノンナから破壊力抜群の一言が。
虎丸に面と向かって「虎丸さんの勘って本当に当たるんですか?」って。思わず飲んでいたコーヒーを噴いてしまい、白いPCのキーボードが濁ってカフェオレカラーになってしまった。
いやいや、虎丸の勘はすごいぞ。だって晩酌中に知らない携帯電話から電話がかかってきて、「虎丸さん…俺もう駄目だ」の一言だけで相手が富樫だって当てるんだから。って、そういうことじゃないか。
あとは捜査一課長・江波役の篠井英介。これまでもちょいちょいその片鱗を見せていたが、これほどまでに“怒号が似合わない上司”も珍しい。ものすごくシリアスなシーンのはずなのに、失礼ながらあの1オクターブ高い声には笑いが堪えられん。
そして、今回のメインゲスト・和田正人と美山加恋。和田は意外にも初の月9、美山は子役時代以来約13年ぶりの月9出演だそう。
そんな二人がかつての恋人役とのこと。映像を見る前は申し訳ないけど、美山に対して子役時代の印象が強烈だっただけに、恋人がいるとか、婚約者がどうなどと文字を見ても戸惑ってしまっていたのだが…さすがに演技力はずば抜けている。
残念ながら彼女が殺害されたところから物語が動き出すということもあり、回想シーンしか出番はなかったのだが、ちょっとしかない出番でも綾乃の人間性をきっちり表現してくれた。
スピンオフで生きているときの綾乃だけを描いてくれてもたぶん見ちゃうだろうな。
それに和田は和田でちょっぴり小心者的なキャラの演技がよくハマるし、千原ジュニア演じる警視庁刑事部長・壇浩輝もチラッとしか出ないけどまた本人が思っている以上に(?)意味ありげな物言いをするし、小雪はいつだって美しい。
最終回の足音も大きく聞こえてきてしまったが、まだまだ謎は多いし、いつまでもこの魅力的なメンバーが織り成すドラマを見ていたい。
それに何の根拠も証拠もないけど、最終回に向けてますます面白くなっていくのは間違いないはずだ。どうか期待していてほしい。
そもそも冒頭で触れたように筆者の言葉を信じてくれるなら、の話だが。
このレビューもうそだらけかもしれないから、自分の目で第9話を見て確かめた方が良いのでは?
文=人見知りシャイボーイ