働きながらダンスでも輝ける時代が到来?! 社会人ダンサーとして活躍するサイバーエージェントダンス部にインタビュー
ダンスが世間一般に浸透し始めているこのご時世。今、注目してほしいダンスシーンがある。それは"社会人ダンサー"だ。企業に就職して社会人として働きながら、ダンス活動もするという新しいダンサーの形。
キッズダンスが盛り上がり、近年では高校ダンス部がメディアを騒がせるなど、一定の世代が作り上げるダンスシーンが一つの時代を作っている。その次に時代を作るかもしれない社会人ダンサーに注目して取材を敢行した。
今回は、インターネットテレビ局「AbemaTV」の運営や国内トップシェアを誇るインターネット広告事業を展開している『株式会社サイバーエージェント』のダンス部にインタビュー。
ダンス部部長の齋藤学さんと副部長の柴田理沙さんに、サイバーエージェントダンス部のことや社会人ダンスシーンのことについて語ってもらった。
「“タテ・ヨコ・ナナメ”の繋がりを作る」 サイバーエージェントダンス部ってどんな集団?
――サイバーエージェントダンス部は、いつ頃できたのですか?
【齋藤】 2006年にできたので、もう13年くらいになりますね。歴史が長いのでメンバーの年齢層も下は内定者の22歳から上は創部からいた40歳くらいまで幅広いです。
【柴田】 固定メンバーを決めているとかではないので、人数も多いんです。全員が毎回イベントにいるわけじゃないですけど、ダンス部の所属メンバーは100人くらいいます。
――そんなに人数が多いと、ダンスジャンルもバラバラじゃないですか? 練習も場所とか予定を合わせるの大変そうですね。
【齋藤】 ジャンルはHIPHOPが多いですね。女性が多いのでGIRLSHIPHOPとかJAZZ系とかが多いんですけど、全体でショーケースをする時は、HIPHOPとかLOCKが多いです。
【柴田】 ブレイキンも多いですよね。毎回チームでイベントに出ています。
【齋藤】 練習は、イベント前に各チームで集まって練習するのと、年に2回大きな練習会を企画してやるという2パターンがあります。大きな練習会は、ダンスキャンプみたいに一日使っていくつかのダンスジャンルをコマにして参加するという方法でやっています。
――練習場所は部員同士でお金を出してやりくりしているのですか?
【齋藤】 弊社は、部活制度がありまして、部活の活動費が毎月サポートされるんです。
【柴田】 活動費を使って、プロダンサーをお呼びしてレッスンをしてもらうこともあります。杏仁豆腐のERIさんとかTOKYO FOOTWORKZのSHUHOさんに来ていただきました。
――ダンス部の雰囲気はどうですか? 会社だと上司や部下といった上下関係とかも影響がありそうなイメージです。
【齋藤】 上下関係は全くないですね(笑)。会社の部活動のあり方として「“タテ・ヨコ・ナナメ”の繋がりを作る」という考え方があるので、上司部下、先輩後輩という関係は気にしてないです。趣味で繋がる関係性なのでみんなフレンドリーにやっています。
【柴田】 その繋がりが仕事に活かされるので、ありがたいですね。「仕事とダンスの両立は大変じゃないの?」って思われるかもしれないですけど、みんな好きでやっているので楽しく活動しています。
――ダンス部で良かったことはありますか?
【齋藤】 僕は“タテ”の繋がりと“ナナメ”の繋がりができたことですね。仕事で悩んでいる時に気軽に相談できる方が多かったり(笑)。仕事面に活かされているのも大きいです。
【柴田】 ずっとデスクワークが続く中で、ダンスができたりイベントがあると気持ち的にも開放されますね。あとは、ダンス部を通じて社員と趣味で仲良くなれるので、部署横断の施策が円滑に進むこともあり、とてもいいなと思っています。
【齋藤】 あと、こういう繋がりでダンス部の後輩たちを呼んで座談会をしたんですけど、そこで良さそうな人がいたら採用の紹介をするという取り組みもしました。実際に内定に至った人もいて、この取り組みは会社の採用活動内でプロジェクト賞を頂きました。
――ダンスで採用が決まるってすごいことですよね。採用の決め手や判断基準はあるのですか?
【齋藤】 ダンスって何人かで一つの作品を作るじゃないですか。コンテストに勝つために協力してネタを作って、フィードバックしてもらってまた作り直すというフローが、仕事と似ているんですよ。それを経験してきている人って才能を仕事に活かせると思うので、去年採用活動に取り入れました。面白かったですよ。
【柴田】 ダンスをやっていく中で、チームをまとめたり、チームで働く経験というのは、弊社の社風にもあっていますね。
――社会人だからこそのダンスの楽しみ方はありますか?
【柴田】 仕事に活きる繋がりができたり、ダンス部の活動がない時も集まって飲んだりできるのも、社会人ダンサーならではかもしれませんね。
【齋藤】 部長をやらせて頂いた理由に、自分の能力発揮も含めて会社のために貢献できることはないか? と考えた部分もありました。自分自身が部活の“タテ・ヨコ・ナナメ”の繋がりのおかげで仕事が苦しいときに支えられたので、なによりこういう仕事以外にベクトルが向いていて、いろいろな部署の人たち集まる環境の素晴らしさをどうやったら感じてもらえるかを考え、楽しみながらやらせてもらっています。この経験って仕事でも大きな組織を動かすときに活かされると思うんです。
――ダンス部の活動が仕事にも活かされているのですね。齋藤さんは部長として歴代部長から受け継いできたDNAみたいなものはあるのですか?
【齋藤】 DNAですか(笑)。誰よりも一番楽しむってことですかね。実は仕事が忙しすぎてダンス部から離れていた時期があったんです。ダンスができる方だったので、部を盛り上げていた存在だったんですけど、当時の部長に「関わるからには、繋がりを大切にしてほしい。仕事もダンス部も優先順位をちゃんと決めて両方うまく保てるようにして」というのを教えてもらって、それは今も意識しています。
――柴田さんに聞きたいのですが、齋藤部長はどんな部長ですか?
【柴田】 いじられやすい愛されキャラですね(笑)。先輩には可愛がられているし、後輩からも慕われています。ダンス部の年齢層は幅広いんですけど、まとめるのがめちゃくちゃ上手です。齋藤さんが部長になってからの1年は、私もダンス部に対しての意識が変わりました。
【齋藤】 褒める~~(笑)。今日は飲んじゃうなぁ~~(笑)。
「社会人になってもダンスをやりながら活躍できるんだ」という希望を持てるシーンへ
――サイバーエージェントは社会人ダンスイベントを開催していますが、今の社会人ダンスシーンはどうなっていますか?
【齋藤】 企業のダンス部がどのくらいあるのかはわからないですけど、僕たちが開催しているイベントには、ヤフーさん、パーソルさん、リクルートさん、トーマツさん、電通さん、博報堂さんと、いろいろな企業の方が参加しています。最近も自分の大学時代の友人が企業のダンス部を作ったと報告してきたのですが、ダンス部という形になっていなくても、ダンスをやっていた人は仕事もプライベートもすごく充実しているイメージがあるので、社会人ダンサーやダンス部は増えてくると思います。
【柴田】 あとは、大学でダンスサークルにいた人たちが、OB&OGだけの団体を運営して、公演を開催するケースも増えていますね。
【齋藤】 そういったケースもある中で、僕らは企業として企業間のコミュニケーションを大切にしたダンス活動をしています。その部分では先駆けとして、僕ら発信でこれからも社会人向けのダンスイベントをやっていきたいです。実はイベント後の打ち上げでは、いろいろな企業の人が仲良くなれるように席をシャッフルしているんですよ。そこから新たなビジネスや繋がりが生まれると嬉しいですね。
――今後、社会人のダンスシーンがどうなっていって欲しいか理想を教えてください。
【齋藤】 ダンスをやっていた人たちが社会人になってもダンスを活かして頑張れるような環境になってほしいと思います。学生の頃からダンスをやっている子って、就職活動の時にダンスの話をしても受け入れてもらえないことが多いみたいなんです。去年、僕らはダンサー採用を実践しましたが、他の企業でもダンスサークル向けのセミナーを実践するところは増えています。そういう取り組みから、仕事とダンスを両立して頑張っている姿や企業の広報としてダンスを活かす姿などを見せて、ダンスを頑張ってきた学生の子達が、「社会人になってもダンスをやりながら活躍できるんだ」という希望を持てるようなシーンになっていったら良いなという理想はありますね。
【柴田】 弊社は、ダンス人口が多かったのでダンス部の運営は結構うまくいったんですけど、そうもいかない企業も多いと思うんです。企業で部活を作るって、他部署の方にも参加してもらうなど会社によって規定がありますし、大変なんですね。でも、私たちがやっているようなイベントがきっかけで、自分の会社にダンスできる人はいるかな? ダンス部を作ってみようかな? とか、新たなコミュニティーを作るきっかけになってくれれば嬉しいです。私自身、ダンス部の存在に助けられたので、ダンス人口も増えていますし、もっと形になっていけばいいなと思います。
――働きながらダンスで輝けるシーンになったら素晴らしいですね。最後に聞きたいのですが、サイバーエージェントのダンス部ってダンススキルがないとダメなのですか?
【齋藤】 ダンススキルは必要ないです(笑)。ダンス未経験の人でもいいですし、それこそ飲み会に来るだけでもいいんですよ。ダンスが好きとか体を動かしたいとかでもいいので、ダンス部にいる人たちをきっかけに最終的には会社の成果につながればいいなというのが、僕らのモットーです。“タテ・ヨコ・ナナメ”のつながりをみんなで作りましょう。
【柴田】 仕事の部署以外で、会社に居場所があるのって想像以上に楽しいですよ。
(文●のざたつ 撮影●松澤あきえ)