SKE48の“元気印”熊崎晴香が名作悲劇で見せたもの<コラム>
4月18日から東京・品川プリンスホテル クラブeXで上演が行われていた、SKE48版「ハムレット」が21日に千秋楽を迎えた。
私はゲネプロ、初日(夜)、最終日(夜)と都合3度見させてもらい、ゲネプロ後は“見どころ紹介”という形で記事 (※4月18日掲載「SKE48版『ハムレット』はアイドルらしさを生かした名“エッセンシャル版”!」) にしたが、今回はその際に物語の“要”として挙げた熊崎晴香について、その理由と共に書きたいと思う。
その記事にも書いたが、私は今回がシェークスピア作品初観劇。事前に本を読んでおいたのだが、そのときに思ったのは、ホレイシオを演じる熊崎の重要性だった。
熊崎が重要だと思った理由は主に2つ。ホレイシオはハムレット(松井珠理奈)の復讐を見届ける、観客に近い視座であることと、物語を締めくくる役割を担うのが、ポローニアス役・高柳明音が掛け持ちで演じたフォーティンブラスと、このホレイシオであるからだ。
物語の終盤、悲劇を目の当たりにした観客の余韻を妨げてはならない。普段は“滑舌が悪い”キャラクターでイジられ、笑いを取っている熊崎だけに、本人も気にしていたところだと思うが、私も正直、少し心配に近い気持ちがあった。また、持ち前の明るさも、おどけるシーンもあるとはいえ、薄めなければならなかったろう。
そういった点で、元々男役の似合う松井や、女性らしさを期待されての出演となったガートルード役の鎌田菜月とは違い、熊崎はまず自身のキャラを消し、なるべく早く“熊崎晴香”ではなく“ホレイシオ”として見られるように腐心したのではないかと思う。
そして、結論を言うと、熊崎はその役目を全うした。舞台上に“ホレイシオ”として立ち、(私の見た限りでは)セリフにつかえることもなく、復讐劇の補助線としての役割を果たし、物語を締めくくる語り部となっていた。
また、ハムレットの死に際には涙を流し、千秋楽では、最後のセリフでたっぷりと間を使い、観客を引き付けることもできるようになっていた。
元々、アイドルとしての歌やダンスにおいて、“元気の良さ”や“明るさ”というベクトルではグループ随一のパフォーマンス力を持つ熊崎。この名作悲劇で得たものを、陰のある楽曲などに還元できれば、そのパフォーマンス力もより一層深みを増すだろう。
SKE48版「ハムレット」は、5月21日(火)にディレイ・ビューイング(映画館上映)が行われることと、10月4日(金)に発売される「SKEBINGO!」Blu-ray BOX限定の特典映像として収録されることが発表されている。