<試写室>「ストロベリーナイト・サーガ」二階堂ふみ、山田杏奈、八木優希…心揺さぶる女優陣の熱演
主観丸出しのレビュー
なるほど、やっぱり女性って怖いな…。
そういう書き方はコンプライアンス的にNGかもしれないが、そう言わざるを得ないくらい女優陣の演技が引き立てられた回だった。
これまでの3話とは完全に一線を画したストーリー展開で、余計な登場人物を極限まで省き、「言葉」でストーリーが紡がれている。
何といってもこの回の見どころは、ゲスト女優・山田杏奈演じる重要参考人の女子高校生・下坂と、二階堂ふみ演じる主人公・姫川による心理戦。
いや、むしろ心理戦というレベルを超えて、見えない手による殴り合いのケンカのような言葉の応酬。思わずニヤけてしまうほど、ゾクゾクする。口調は穏やかなのに、とてもとげとげしい。
真面目そうに見えて大人をなめてかかる女子高校生と、下手に出てやれば調子に乗りやがって感のある刑事。序盤は冷静だったのに、だんだん静かに熱を帯びていく感じ…この2人の取調べのシーンなら何時間でも見ていられそうだ。
それに、山田杏奈という女優は、ビジュアルだけ見れば“親戚の娘”感がある親しみやすさの持ち主なのに、つい往復ビンタをかましたくなるくらい憎々しい演技をする。惚れ惚れするくらい生意気な娘さんを好演している。
姫川を演じる二階堂もどちらかといえばそういうタイプが似合いそうだが、失礼ながらどこか生意気なことを言いそうな予感がする顔立ちのせいか、「ああ、このくらいは言うよね~」と思ってしまってあまり意外性はないんだが…山田のギャップは末恐ろしい。
逆に姫川の「当たり前のことをバカにしない。当たり前のことにはそれが当たり前になるだけの理由があるの」というせりふもまた、グサッときた。
さしずめ木曜の“取調室”は六本木だけがすごいわけじゃないって、感じか。
そして、それ以上に感情を突き動かされたのが、姫川の回想シーンだ。
今回は彼女の身に過去に起きた事件、刑事を目指すきっかけとなった刑事について詳しく明らかになる回でもあり、女子高校生時代の姫川を演じている八木優希がフィーチャーされる。
どことなくホワンとした雰囲気の漂う女優だけに、それまでの「無」の演技から一転してのあの法廷シーンの迫力には驚いたし、“強い思い”に思わず涙があふれた。
内容は分かっていたはずなのに、それでもこらえられず、泣けてきた。涙もろいのは年のせいか、はたまた八木の演技のおかげか。
もちろん八木演じる姫川だけではなく、つい“転職相談”をしたくなる女優・吉谷彩子演じる佐田刑事とのやりとりが効いているからこそ、泣けてきた。あの日記を出されちゃ、無理ですわ。
序盤に出てきたチャーミングな國奥センセー(伊武)のこともすっかり忘れてしまうほど、後半の取調室での畳み掛けるようなやりとりと、この姫川の回想シーンに感情が全部持っていかれてしまった。
ゴールデンウイークということもあって、夜にドラマをのんびり見ようという人は少ないのかもしれないが、たった1時間だけでも姫川班に時間を与えてもらえれば、満足度の高い濃密な時間が過ごせるはずだ。
人気スポットの行列に並ぶのも良いけど、テレビの前に整列して姫川主任に敬礼してみるのも良いのでは?
文=人見知りシャイボーイ