若旦那こと新羅慎二、妹役が磯山さやかと聞いて「テンション上がりました(笑)」
純粋ゆえにだまされるけど、相手を憎みきれない女性
――千鶴を演じての感想は?
磯山さやか:家族のことで悩みがある役は、あまり演じたことがなかったです。そんなに登場するシーンは多くないので、その中で千鶴がどんな思いを抱えているのか、どんなことを悩んでいるのか、どうやって表現すればいいのか考えました。
衣装合わせの際、千鶴のコンセプトとしてまず挙がったのが“田舎から出てきた女性”です。都会に憧れて上京してきたけれど、純粋ゆえ悪い男にだまされてしまう。それでも、千鶴は人がいいから相手を憎み切れない。
兄も純粋でありつつ、自由奔放な悪。それは昔からなので、もう関わりたくないという思いながら、兄と妹なので絆が断ち切れず、どこか心配。決して幸せな環境ではないけれどめげずに生きているし、母性の強い女性になればと思い演じました。
――山沢兄妹の見どころは?
磯山:この兄妹の関係は特殊といえば特殊。どこか家族の絆を忘れていなくて、その切なさ、気持ちが伝わるよう意識しました。一緒の場面はありませんが、新羅さんと兄と妹に見えていればいいですね。
台本を読んで私が興味を持ったのが、圭吾さんを通し、事件被害者の心情を丁寧に描いているところです。それは千鶴にも通じるところがあって、身内に兄のような乱暴者がいるため、いろいろ迷惑をこうむってきたはずなんですよね。千鶴は何かの事件の被害者家族ではありませんが、「兄がいるせいで楽じゃなかった」というところを表現できれば、と思っています。
――磯山さんに男のご兄弟は?
磯山:兄がいますが、(山沢と違って)すごく優しいです(笑)。姉もいて、姉は一緒にいると私のほうがお姉ちゃんみたいになるんです。
――千鶴も一見、おとなしい女性ですけど…。
磯山:そうですね。決して単純な女性ではないと思います。でも誰だって普通に生きていても、いろんな一面を見せると思うんです。この作品は、平凡に生きている人にだって、こんな驚きの一面があるんですよ、ということに気付かされる内容で、「あれ、自分にも他人からしたら驚かれる一面を持っているかも」と思わずにいられないというか。一見、現実離れした話のようですけど、実はすごくリアルに人間を描いている気がします。