<スピードワゴン小沢一敬映画連載 このセリフに心撃ち抜かれちゃいました>第3回『パーティで女の子に話しかけるには』
<スピードワゴン小沢一敬連載>『このセリフに心撃ち抜かれちゃいました』
■小沢一敬:愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。
第3回『パーティで女の子に話しかけるには』私たちは旅人ではなく観光客に近いわ
映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんならではの「僕が思う、最高にシビれるこの映画の名セリフ」をお届け。第3回は、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』('01)のジョン・キャメロン・ミッチェルが監督した"ボーイ・ミーツ・ガール"のイギリス映画『パーティで女の子に話しかけるには』('17)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?
――『パーティで女の子に話しかけるには』とは面白い選択かなと思いました。
小沢一敬(以下・小沢)「うん、選んどいてなんだけどさ。俺もこれ、不特定多数の人間には薦めないもん(笑)。でも友達には絶対薦める。友達は分かってくれると思うから」
――人を選んで薦めたい映画なんですよね。
小沢「そうそう! でもそこがいいんだよね。変だけどピュアだし。しかもすげーパンクな映画でしょ。主人公の少年がパンク好きなのはもちろんなんだけど、ザ・ダムドの『ニュー・ローズ』って曲が冒頭でかかるところからして、来たねって感じ。知ってる? セックス・ピストルズ、クラッシュと並んでザ・ダムドは3大パンク・バンドの一つなんだよ」
――パンク好きなんですか、小沢さん。
「俺は愛知県出身なんだけど、名古屋は"栄パンクス"って言葉があるくらい、一時期すごいパンク・シーンをつくり上げてたわけ。俺も15~16歳の時は、この映画の主人公たちのように3人くらいでライブ・ハウスによく行ってた。だから映画を観た時『10代の頃の自分も行ったなあ』って思ってた。自転車で『わー』っと行く感じとか『知ってる、知ってる』って。俺も一時期、髪型モヒカンにしたり、ショットのライダースにびょう打ってたし」
――じゃあ、自分の青春と重ねながら観たと?
小沢「んー、それはどうだろう。だって俺、宇宙人と会ったことないし」
――それはそうですよね!(笑) でもこの映画の宇宙人登場は衝撃的展開でした。パンク少年の青春モノかと思いきや、出会った可愛い娘が遠い惑星へ帰らなければいけない設定で、たちまち映画自体がSFに変化しちゃうのはステキ。
小沢「常識では測れないような作りしてる映画でしょ。そこがパンクだなと」
――この映画自体が今までの映画に反旗を翻す感覚の"自由な"作りになってますよね。さてこの映画で好きなセリフはありましたか?
小沢「私たちは旅人ではなく観光客に近いわ」
――主人公のパンク少年エン(アレックス・シャープ)の彼女となるザン(エル・ファニング)が、自分のPT(保護者)であるコロニーの長に語る言葉ですね。ホントは彼女、当り障りのない観光ではなく、そこの土地の人たちとちゃんと交流してみたい。その彼女の思いがあふれ出た言葉です。後に登場するライブの場面では、関連した言葉が歌詞になってます。自由に目覚めたザンが客に「マイク返せ。クソ女。ただの旅行者だ」と言われて、「私は旅行者じゃない!」ってシャウトして言い返してました。なぜ、このセリフを選ばれたんですか?
小沢「俺はよく友達と旅に行くのね。でも俺は別に観光名所を巡るとか、そういうのはしたくない。それは観光であり旅行。"旅行"じゃなくて"旅"をしたいんだよね。じゃその違いは何かっていうと、"旅行"は行き先も、行って何をするかも決めているもの。だけど"旅"はそういう決め事がなく、自由に行動することなのね。だからザンのこのセリフを聞いた時、『俺と同じこと考えてる』って思ったわけ。ま、現実は旅って今の俺にはなかなか無理なんだけど(笑)」