山田裕貴「僕だったらあきらめない」
――劇団での撮影の雰囲気や鈴木杏樹さんとの共演はいかがでしたか?
劇団の撮影では、稽古のシーンとかもあって、本当に舞台をつくっていくような感じでした。鈴木さんは意見をたくさん出してくださる方で、大先輩なので、緊張してしまってはじめは聞くことしかできなかったのですが、稽古や撮影を続けていくうちに、「ここはこうなると思います」「こういう気持ちになると思います」と意見が言えるようになっていきました。雪次郎と蘭子さんの関係がそうさせてくれたのかな?と思いました。
稽古や舞台のシーンでは、しびれる場面がたくさんあって楽しかったです。俳優をやっている役を演じるのは、作品の中で違う作品を演じるということなので、ドラマの中でもいい作品にしたいという思いはあります。こうやって演じたら、放送される一幕だけでも伝わるかな?と考えながら演じました。
――俳優への道をあきらめた雪次郎ですが、山田さんならどうしますか?
僕だったらあきらめないですね。あんな風に言われたら「なにくそ!」と思います。蘭子さんを見返してやろうとか、蘭子さんが好きだから絶対一緒にいよう、俳優としてのぼりつめて、もう一度告白するかもしれないですね。
雪次郎は自分で「やりたい」と言ったことをやめることになるんですけれど、すごく悔しかったと思うんですよね。今、思い出すだけで辛いです…。劇団の仲間ともっとお芝居をやりたかったと思いますし、蘭子さんが好きな気持ちも本物だし、蘭子さんと芝居をやりたいという気持ちも本物で、そこで迷っていたから蘭子さんに厳しいことを言われちゃって…。
でも雪次郎の選択は、良い逃げというか、敗北者ではないと思うんです。人生の岐路に立っていただけで、負けてはいない、勝てなかっただけ。
そこで、雪次郎が愛の深い小畑家を選んだのは、いい選択だなと思いますし、そういう家族がいてくれるのは、すてきだなと思います。逃げたのではなく、そこに身を委ねた、帰るべき場所に帰ったんだなと思います。生まれた場所にあったものって覚えているじゃないですか。懐かしさを感じたり…。「雪月」に帰ってきて、やっぱり懐かしいって感じました。ここが帰ってくる場所なんだなと。