1964年に日本で初めて開催された東京オリンピック。その成功の一翼を担った、一人の若者がいた。各国の国旗の準備を一手に引き受けた学生、吹浦忠正だ。大河ドラマ 「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」(NHK総合ほか)の11月17日放送回から登場するこの青年を演じたのは、須藤蓮。連続テレビ小説「なつぞら」(2019 年NHK総合ほか)の高山昭治役などで注目を浴びた、気鋭の若手俳優だ。
「オーディションの時点で吹浦さんとはどこか縁を感じていたので、出演が決まったときはとてもうれしかったです。本当に演じてみたい役でしたから」
吹浦氏ご本人は現在78歳。役作りのために実際に会ったりしたのだろうか。
「モノマネになってはいけないと思い、あえて会いませんでした。すごくすてきな方だろうと想像できるので、ご本人の印象に引っ張られそうだったから。吹浦さんのインタビューを読み、国旗の勉強をして、あとはセリフから人物像を解釈しました」
ドラマの撮影で特に印象的だったのは、オリンピック組織委員会のシーンだという。
「人柄も含めて魅力的な役者さんたちとお芝居できたのは、とても貴重でした。演出家さんも素晴らしい方ばかりで、面白いものを撮ることに対するエネルギーがあふれている現場は楽しかったです。特に阿部(サダヲ)さんがとてもすごくて…。何というか、次元が違いました(笑)」
吹浦忠正という役を演じたことは、自身にとっても大きな財産となったようだ。
「吹浦さんがオリンピックに向き合う真摯でガチンコな姿勢と、『いだてん─』に向き合う自分を重ね合わせ、役から勇気をもらいました。とても貴重な経験だったと、あらためて実感しています」
取材・文=篠崎美緒