人気漫画家、北条司が初告白!「僕のギャグの原点はアニメ“トム&ジェリー”」
「シティーハンター」「エンジェル・ハート」の人気漫画家・北条司が、このたび実写映画で初めてメガホンを取り、世界中の人々が共感できる“愛の物語”を描き出した「エンジェルサイン」(dTVチャンネルのひかりTVチャンネル+で配信)。「サイレントマンガオーディション」作品6,888編の中から選び抜かれた5作品に、北条司が描き下ろしたオリジナルの「プロローグ&エピローグ」を加えて構成された長編オムニバス映画だ。全編を通してせりふを用いず、映像と音楽のみで物語が展開していくため、言語や国境を超え、世界中の人が共感できる内容となっている。今回、北条のアトリエを訪問し作品への思いなどを聞いた。
一つのものをみんなで作り上げていく作業は本当に楽しい
――今回、総監督に就任されたきっかけはどんなところからですか。
当社の社長から「映画の監督やらないか、やるよね、やってみろ」と言われまして(笑)。ちょうど連載が終了したいいタイミングでしたし、面白そうだからやらせていただくことにしました。ただ僕ももう60歳なので、僕でいいんだろうかという気持ちが心のどこかにあったので、「後悔しないでくださいね」とは言いましたね(笑)。とにかく一つのものをみんなで作り上げていく作業は本当に楽しいです。
――本作はサイレントマンガから生まれているわけですが、サイレントマンガの魅力って何でしょうか。
そんなに複雑な物語設定はできないですし、長編も無理でしょうけど、叙情的な短編を言葉なしに表すのには向いていると思います。こういうのは同人誌に近いマニアックな雑誌では昔からありましたね。僕らの前の世代のマンガ家さんたちもそういうのを描いていたと思います。
マンガって静かじゃないですか、ドカーンドカーンと描いてあるから何となく言葉や音をイメージするけど、そういうのを排除してゆっくりと進行するようなものを描いてみたいという気持ちがあるんじゃないですかね。マンガは登場人物が実際にしゃべってないのにしゃべっているように感じさせ、音がないのに音を感じさせるように描くものですが、サイレントマンガはそういうものを一切排除してゆっくりと物語を構成していけるのがいいと思います。絵だけで話を構成していくというのは、マンガを描く側にとって、ちょっとあこがれでもあるんです。
――今回は脚本がないそうですね。絵コンテ、Vコンテから映画を作るというのはどうですか。
せりふがない映画ですから、脚本は必要ないと思うんですよ。ただ構図などは予め提示した方がスタッフにも役者にも分かりやすいと思いました。みなさんプロなので、僕のイメージを絵コンテやVコンテを通して伝え、あとはみなさんのイメージでやってください、という感じでした。
――絵コンテのクオリティーの高さには驚きました!
そうですかね、僕は絵コンテとして描いただけなんです。でも役者の方がやりやすいと言ってくれましたので嬉しかったですね。
いろいろな秘話が飛び出す
――アクションのイメージが強い北条先生ですが、今回は静かな作品なので意外でした。
たしかに作品がアニメーションや映画になったことでアクションシーンが強調されていて、僕の作品はアクションのイメージが強いと思いますが、僕のマンガにはアクションシーンはほとんどありません。事件解決の場面では銃を大体1、2発撃って終わりなんです。アニメーションや映画のように、あんなに人をバタバタと倒して敵の陣地に乗り込んで行くようなシーン、僕は描いたことないんです(笑)。それに今回は選ばれた5作品がアクションではなく、すべて叙情的なものでしたからプロローグやエピローグをアクションにするわけにはいきませんしね(笑)。
――では、そのプロローグとエピローグは、どのように考えられましたか。
5作品が最終的にそろうだけではつまらないので、何か一つのきっかけがあってそれに引き寄せられてくるような話にしたい。それには音楽的なものでまとめるのがいいだろうというところから発想しました。