岡田惠和が「少年寅次郎」で描いた家族のかたちは「結構スパイシーでした」
「書いていて結構スパイシーでした」
――出演者の皆さんの演技はいかがでしたか?
真央ちゃんはすごく役に気持ちが入っているというか、彼女の頭から指の先まで車光子に、母親に見えますよね。
それと寅次郎! オーディションで見つけたそうですが、「令和にこんな子がいるのか」となりました。
実は最初に一番心配したのは寅次郎なんです。渥美さんのイメージがある中で、かわいいイケメンみたいな男の子だとちょっとね…(笑)。だからといって探すのって難しいじゃないですか。スタッフさんがそのまま寅次郎になる感じの寅ちゃんを見つけてくれてよかったです。
脚本を書く段階ではキャストがほぼ決まっていたので、基本的には当て書きしました。
平造に関しては、自分と他の女性との間にできた子供が家にいて、その子をかわいいと思っていないわけではないけどかわいがることができない感じとか、父と子の分かりあえなさというのは実の父と子にもあることですよね。
だからそこをあまり甘く書くことはしなかたのですが、その分光子と平造の夫婦の芝居は高度だったのではと思います。
――岡田さんはこれまでにもさまざまな“家族の形”を描いていらっしゃいますが、今回描かれている“家族の形”はいかがですか?
お父さんが芸者さんに子供を生ませて、その芸者さんが捨てた子を光子さんが育てるという、寅ちゃんの誕生自体に毒があるし、決して能天気な家族の話ではないですよね。そんな経緯がある上で一緒に暮らしていて、さらに寅次郎を言葉で疎む父親というのは書いていて結構スパイシーでした。
さらにその中にある母と息子の絆というのも自分の中でも書いたことのない感じだったので面白かったですね。
また、これは原作にもあることですが、寅次郎には腹違いのお兄さんが居たり、さくらも腹違いの妹で…。この父親とお母さんのもとに生きてきたから寅次郎はああなるんだなという感じには仕上がっていると思います。
――原作の山田洋次監督とお話しされたことはありますか?
ごあいさつに行って、一晩一緒に過ごしました(笑)。
山田さんは小説家ではなく監督なので、おそらく書いている時に「きっと自分はこうやって撮る」と考えていたと思うんです。だからそれを全て引き受けてしまうのはちょっと責任重大すぎるなと思い、適度に聞いて、適度に忘れてという感じでした(笑)。
こちらとしては執筆前に軽い感じでお会いするのかと思っていたら「岡田くんの中のファーストシーンは何?」って言われて…。まだ考えてない…と思ったのですが(笑)。当然ですけど各登場人物に思い入れもありますし、やっぱり本当は自分で撮りたいんじゃないんですか(笑)?
世代的に僕の知らない当時の少年の遊びやご自身のことをいろいろと教えていただいて、とても参考になりました。
台本を書き始めてからはお会いしていません。リスペクトが強いので、お会いしちゃうと「分かりました!」と言っちゃいそうで…。
自分が苦しくなってしまうので、脚本家として“素材”として扱おうと思い、最初に教えていただいたこと以外に内容についてご相談とかはしていないです。
毎週土曜夜9:00-9:50
NHK総合にて放送
出演:井上真央、毎熊克哉、泉澤祐希、岸井ゆきの、石丸幹二ほか
原作:山田洋次「悪童 小説寅次郎の告白」
脚本:岡田惠和
音楽:馬飼野康二
制作統括:小松昌代、高橋練
演出:本木一博、船谷純矢、岡崎栄