有村架純、林遣都の主演作も!12月初放送映画3作品を厳選!<ザテレビジョンシネマ部>
『しゃぼん玉』(2017)
直木賞作家・乃南アサのベストセラー小説を林遣都×市原悦子の共演で映画化。親の愛を知らずに育ち、引ったくりの果てにナイフで人を刺してしまった青年、翔人(林)が、逃走中に迷い込んだ椎葉村で老婦人のスマ(市原)と出会い、それまで知ることのなかった他者の善意に触れ、自身の生き方を見つめ直していく。
この手の作品には、一種のテンプレートが存在する。何かしらの罪を犯した者が、罪を償わぬまま幸せな時間に触れ、困惑し、その幸せが一時的なものでしかないことを悟り、葛藤する。自責の念に駆られ、己の罪と向き合い始める。当然本作もテンプレート通り。翔人は光を浴びれば浴びる程に自らの影が濃くなり、目を背けられなくなっていく。そして自分の罪と向き合わざるを得なくなっていく。だが本作は、そんなテンプレートと少しだけ違っていた。(翔人とスマに血縁はないが)親が子を想う気持ち、即ち「無償の愛」という要素が上乗せされていた。それまで愛を知らずに生きてきた翔人。そんな彼が愛に触れていく様は、親からこんな風に愛情を注がれてきたのだなと、こうやって人生の大切なことを教わってきたのだなと、僕たち自身を客観視しているような錯覚へと導かれる。
スマが言っていた。「大切だと思える人に嘘をついてはいけない」と。そう、とても当たり前のこと。だけど、忘れたり疎かにしてしまいがちなこと。ド派手な展開も、魅力的なファンタジーや恋愛もないけれど、翔人が進む道は、きっと一歩踏み出すための勇気を与えてくれると思います。