二階堂ふみ&GACKT共演「翔んで埼玉」に見る関東という名の秘境、あるいは本気の茶番劇<ザテレビジョンシネマ部>
2019年2月の公開以来ロングラン・ヒットを記録し、興収37億円超というバカ当たりを見せた「翔んで埼玉」。関東圏において、東京があまりにも耀くがゆえに隣接した県は常に比較されてきた。そんな中で育まれた自分の出身県などに対する熱い思いは「秘密のケンミンSHOW」(毎週木曜夜9:00‐9:54、日本テレビ系)など今やバラエティなどでも定番のネタになりつつある。その郷土愛を、本気でファンタジー(=現代の埼玉県民がラジオで聴く都市伝説)として成立させたのが本作なのだ。
例えば最初の舞台となる東京の白鵬堂学院は、外観はまるでヨーロッパの歴史的建造物で、内観もロココな雰囲気。おまけに登場人物たちも宝塚的クッキリ濃いめのメイクで迫る。生徒たちの衣裳もドレッシーだ。
しかし、同じ高校内であっても埼玉県出身で現在は東京に住む生徒たちが通うZ組の教室は、完全なる掘っ立て小屋。しかもZ組の生徒がはいているのはもんぺだ。そこからも想像できるように、東京は摩天楼&ヨーロッパの街のイメージなのに、埼玉や千葉になると、時代が違うのか!? と首を傾げたくなるほど文明とは程遠い暮らし、それこそ江戸時代のような生活を送っている。なにしろ医者を呼べとなった時に、医者はいなくて祈祷師はいるという世界なのだから。
県知事が白いギターで歌う神奈川県はまだしも、茨城県は「粘っこく伸びる腐った大豆を好む」人々が暮らす地域とされ、さらにヒドいのが群馬県。もはや翼竜が飛んでいて、文明の片鱗すらない未開の地とされているのだ。ほとんど登場しないが、栃木県とかはどうなっていたのか。気になる。
東京以外へのディスりも強烈だ。「そこらへんの草でも食わせておけ! 埼玉県人ならそれで治る!」「あぁいやだ! 埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!」など、ディスり名言の山。埼玉県民を捕まえるための“さいたまホイホイ”なんて罠まで登場する。