<12月25日(水)~30日(月)上演>三上市朗主演舞台「だから、せめてもの、愛。」家族の絆を問う“新しい余命モノ”
“新しい余命モノ”の新しさとは?
――“新しい余命モノ”ということですが、どの辺が新しい点なのでしょう。
タカイ:いわゆる“余命モノ”っていうと、バラバラだった家族がたとえば親の病気を機に、一致団結して再生する…だとか、主人公が難病と戦いながら亡くなるまでを描く…っていう、ある種、感動的なストーリーが多いと思うんです。
でも今回のお芝居は、父親が余命宣告をされたけど、余命通りに死ななかったことで普通の家族の関係がおかしくなって壊れていく、というストーリーにしました。
それで勝手に“新しい余命モノ”と言っています(笑)。
――三上さんを主演にキャスティングされたのは?
タカイ:“喜劇の王様”チャールズ・チャップリンが言っていた有名な言葉で、「人生は近くで見ると悲劇だが、 遠くから見れば喜劇である」。台本はそれに近いイメージで切実に書いています。笑わせようとするギャグシーンは基本ないです、でも人間って“おかしさ”があると思うんです、真面目に生きてるんですけど、その真面目さに面白さがある。
実は三上さんと初めてお会いした時、「僕はコメディアンだからね」とおっしゃったのをすごく覚えていて。だから今作の、そういう部分を出していただけると思ってお願いしました。
――ストーリーとしては、一度は家族が壊れながらも、結末はちょっと希望が見えてくる印象なんでしょうか。
三上:上演の時期もクリスマスから年末にかけてですし、そういう時に家族が崩壊していくような、ただただ暗い物語だとイヤじゃないですか(笑)。だから、見ていただいて「家族に会いたいな」「連絡してみようかな」と思えるくらい、ほんのちょっと温かい気持ちになってもらって、田舎に帰ったり家族に会いに行ったりしてもらえたらいいな、という気持ちでやっていますね。
――今回初めてご一緒されるということですが、三上さんから見たタカイさんの印象は?
三上:信頼関係が築けないとできないんです、こういうお芝居って。でもタカイさんは信頼関係が築ける人で、ちゃんとディスカッションできる人ですし、不安はないですね。
「『言葉』だけ」に頼らない舞台の醍醐味
――作中にゲップがたびたび登場しますがどんな効果を狙っているんでしょうか。
タカイ:本を書いている者としてこんなことを言うのもアレなんですが、僕は「言葉」だけを信じているわけではないんです。
たとえば家にある調味料だったり、部屋の雰囲気だったり、言葉以外で語ることができることってたくさんあると思うんです。「音」もしかりで、秒針が鳴っているだけで「この家って寂しいのかな」って印象も与えられる。
そういう意味では、何かあった時に一人でゲップしているって、僕は寂しさがあるなって思ったんです。いや、「寂しさ」って言葉にするのもイヤなんですけどね(笑)、そういう仕草にも物語があるんじゃないかなって。
――音楽は、映画 「岬の兄妹」なども手掛けられた高位妃楊子さんを起用されていますがそのこだわりはどう効いてくるんでしょうか。
タカイ:今回の音楽はオリジナルなんです。ちょうど家族モノの作品ですが、実は、高位さんと僕は“四従兄弟(よいとこ)”の関係で…つまり僕のひいおじいちゃんと高位さんのひいおばあちゃんがきょうだいなんです。
人間って、言葉だけでは説明できない感情がいっぱいあるじゃないですか。音楽はそれを補完してくれるものだと思うんです。
切なさや怒りとか分かりやすい感情ではなく、生きていると湧き出てくるなんともいえない感情を今回のお芝居では描き続けているので、お客さんにもより伝わるように、そのなんともいえない感情に寄り添ってあげられる音楽を作りたかったんです。
「いい2020年を迎えるための“観劇納め”に」!
――どんな作品に仕上がりそうですか?
タカイ:面白いものにしないといけないと思っていますし、キャストやスタッフの皆さんが僕より経験のある方ばかりなので、頼り切ってやれることをやりきりたいですし、必ずいいものになるだろうと思っています。
――それでは最後に、既にチケットを手にして舞台を楽しみにしている方、記事を読んでくれている方へメッセージをお願いします。
三上:僕自身は久しぶりに主役…をやらせていただいて、お父さんを中心にとした川崎家という家族の話を描いている作品です。公演のキーカットやタイトル、あらすじだけ見ると暗いお話と思われるかもしれませんが、僕を含めて出ている8人のキャスト、みんな面白いです!
タカイくんがちゃんと役者を見ながら作り上げてくれる、見て損はない舞台だと思いますし、僕の“代表作”になればいいなという意気込みでやっています。幅広い年代の方に見てもらいたいと願っています。今記事を読みながら迷っている方もぜひ!(笑)
タカイ:TAACというユニットも、僕自身もまだまだ未熟です。今回は初めて東京拠点でやるので、ユニットをご存知ない方も多いでしょうし、「どんな芝居をするんだろう」と観劇に踏み切れない方もいると思いますが、見て後悔はしないと信じています。
そのつもりで稽古を積み重ねていますし、キャストの8人も信頼の置ける方々ばかり。いい2020年を迎えるための“観劇納め”に選んでいただいて、見て良かったなと思ってもらいたいですね…絶対損はさせません!
第3弾公演「だから、せめてもの、愛。」あらすじ
これは、余命半年と宣告されながら3年経ってなお死なない父と、その家族たちの話。ハッピーエンドを迎えられるはずだった家族の、その先を描く。
ある日、父は、医師から余命半年と告げられた。父は、家族を集め、余命のことを伝えると同時に、長男とは血が繋がっていないことを明かした。死ぬまでに自分自身の口から話さないといけないと思っていたことだった。どんな事情があろうとも家族であるという父の言葉を信じて、長男はその事実を飲み込んだ。残り半年を家族で幸せに過ごし、父を笑顔で見送ろうと決めた。
しかし、あれから3年が過ぎても、父は死ななかった。次男は就職を機に家を出て、母は脳梗塞で倒れ寝たきりになった。そして、父と長男の関係も次第に変わっていったー。
日程:12月25日(水)~30日(月)
会場:下北沢・「劇」小劇場(東京都世田谷区北沢2−6−6)
料金:前売&当日 4,500円(学生3,500円、要確認) 全席指定席
脚本・演出=タカイアキフミ
音楽=高位妃楊子
出演=三上市朗 美津乃あわ 須貝英 加藤ひろたか 橋爪未萠里 用松亮 森崎健康 大塚由祈子
TAAC公式HP→https://www.taac.co/
TAAC公式Twitter→@TAACproduce