伝記、人間ドラマ、アメコミ...映画アドバイザー・ミヤザキタケルが1月初放送3作品を厳選!<ザテレビジョンシネマ部>
『天才作家の妻-40年目の真実-』(2017)
メグ・ウォリッツァーの小説の映画化。本作で第76回ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門主演女優賞に輝いたグレン・クローズと名優ジョナサン・プライスが夫婦役を演じた。現代文学の巨匠として名高い夫のノーベル文学賞受賞を機に揺れ動いていく妻の心模様を通し、決して軽んじてはならない人とのつながりを描き出す。
あらすじや予告編を見れば、ゴーストライター云々や、夫婦の秘密に迫っていく物語の方向性がある程度読み取れる。そして、本作の筋立てはそれ以上でもそれ以下でもない。想像を上回るような意外性や大どんでん返しはない。
むしろ、真実が明らかになっていくまでの過程や、夫婦の心の揺らぎにこそ最大の魅力が詰まっている。夫婦として、作家として、根っこの部分で信頼し合ってきた者同士の確かなつながり。それが綻びていく様を、音を立てて壊れる様をあなたは目にする。
一番身近にいる大切な人。相手は無条件に愛情や誠意を注いでくれているわけじゃない。こちら側からも注ぎ込む愛情や誠意があってこそ、対等に互いを思いやっていてこそ、絶対的な味方でいてくれる。わずかでも相手を軽んじたり、その存在を否定したりすれば、言わずもがな関係性は崩れていく。長きにわたり手を抜いてきた夫と、我慢し続けてきた妻。良い時もあれば悪い時もあるのが人生、何が正解で何が不正解だなんて当事者間でしか決められない。ただ、身近な人との関係性を見つめ直すキッカケをこの作品は与えてくれる。