伝記、人間ドラマ、アメコミ...映画アドバイザー・ミヤザキタケルが1月初放送3作品を厳選!<ザテレビジョンシネマ部>
『シャザム!』(2019)
バットマンやスーパーマンと世界観を共有するDCエクステンデッド・ユニバースの第7作。身寄りのない14歳の少年ビリー(アッシャー・エンジェル)が不意に手にした、「シャザム!」と唱えると勇者シャザム(ザッカリー・リーヴァイ)に変身できる力と、周囲の人々と向き合う彼の姿が、正しい心を育むために必要なものを教えてくれる。
シャザムの力を使いこなすためには、正しい心が必要だと魔術師(ジャイモン・ハンスウ)は言う。そして、力の後継者として選出されるのはいずれも純粋さを併せ持つであろう子どもたち。ただ、純粋さと正しさは、必ずしも“=”で結び付けられるとは限らない。物事の分別がつく前の子どもは皆純粋であるが、純粋であるが故に間違いも犯す。
むしろ、純粋であったが故に悪に堕ちたのが本作の敵シヴァナ(マーク・ストロング)。人は間違えて、後悔して、死にもの狂いではい上がって、ようやく大切なことに気が付ける。その繰り返しの果てに心は研ぎ澄まされ、本当の正しさを身に付けていくものではないだろうか。
幼い頃に母と生き別れ、里親の元を転々としてきたビリー。誰も信じず、拒絶し、はい上がる術もない。そんな彼が正しさを身につけられるはずもない。にもかかわらず後継者に選ばれたのはなぜか。魔術師に残された時間がわずかなこともあるが、一瞬でも他人のために力を振り絞ることができたから。
そう、今の自分が全てじゃない。今はダメでも、他者から向けられた思いや願いを糧とすることで、正しさを手にする可能性を人は秘めている。基本的には笑える作品だが、物語の端々で信頼されている者とそうでない者との違いがくっきりと見えてくる。ひとりではどうにもできないことでも、信頼関係があれば乗り越えられることもあるのだと目の当たりにできるはず。
それぞれ系統は異なりながらも、どれも胸打つドラマを宿した3作品とともに、新年も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。
文=ミヤザキタケル
長野県出身。1986年生まれ。映画アドバイザーとして、映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに多数出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。