映画通スピードワゴン小沢一敬が語る、“ダサかわ”ヒーローが登場する異色作「シャザム!」 <ザテレビジョンシネマ部>
小沢「あとこの頃さ、俺も年を取ってきたからなのか、10代の主人公っていうものに、ものすごく憧れてるのね」
──それは、どういう意味で?
小沢「最近でそれを一番強く感じたのが、将棋の藤井聡太七段。とある将棋のイベントに藤井君が登壇していて、その映像を観てたんだけど、その中にファンからプロ棋士への質問コーナーがあって、『将棋の神様に一つだけお願いをするなら、何をお願いしますか?』っていう質問があったのね。この質問には、登壇した複数の棋士たちの中で藤井君が最後に答えることになるんだけど、まず一人目の棋士は『すべての対局に勝てますように』と答えて、次の棋士は『メンタルを強くしてほしい』と答えたの。そして、3人目は『長く現役でやらせてください』と」
──それぞれ願い事の種類が違ったわけですね。
小沢「そう。で、最後に『では、藤井さんは?』と振られて藤井君が言ったのが…『そうですね。将棋の神様がいるのなら、一局お手合わせ願いたいです』」
──お〜、カッコいい! まさにシビれる名セリフだ!
小沢「もうね、藤井君って、やっぱり生まれながらの主人公なんだって思い知らされた。勝ち続けるとか、メンタルを強くするとか、ずっと現役を続けるとかって、実は自分の努力でなんとかなることなんだよね。だけど、神様と将棋をするって、自分の努力だけでは実現しないじゃん。つまり藤井君は、努力すればできることは全部やってるってことなんだよ。頑張ればできることは、自分でやる人なの」
──発想が違うんですね、根本的に。
小沢「たとえば俺が『お笑いの神様に何か願うなら?』って聞かれたら、やっぱり『M-1で優勝できるネタください』とか『めちゃくちゃ面白い芸人になりたい』とか言っちゃうと思う。だけどそれが藤井君なら、『僕がボケるからツッコんでください』って言うわけでしょ。その発想がないもん。つまり、そんなことを言えちゃう10代の主人公ってものに憧れてるから、この『シャザム!』という映画も俺はとても楽しめたよ、という話!(笑)」
──なんとか無理やり映画の話に戻ってきました。
小沢「いや、この藤井君の話をどこかでしたかったのよ。この『シャザム!』の主人公は決して藤井君タイプではないし、何なら正統派の主人公をバカにしてる男の子でしょ。でも、そんな彼もこの映画の中で成長していくわけじゃん。彼は友情とか家族というものをずっと信用しないで生きてきたけど、最後はそれを信じられるようになる。10代の主人公っていうのは、そうやって成長する余白をまだまだ残してるわけで。藤井君だって、これからまだまだ成長する。そういうのを観てると、ホントにうらやましくなってくるんだよね、最近」