映画「ナチス第三の男」と「マイル22」が映し出す歴史の闇と人の闇<ザテレビジョン シネマ部>
映画アドバイザー・ミヤザキタケルがおすすめの映画を1本厳選して紹介すると同時に、併せて観るとさらに楽しめる「もう1本」を紹介するシネマ・マリアージュ。
第12回は、過去の出来事とはいえ、僕たちにも同じ過ちを犯す可能性が秘められていることに気付かせてくれる『ナチス第三の男』(2月24日[月・休]よる11:00 WOWOWシネマほか)と、いまだ争い事から抜け出せぬ人間の在り方を、真の平和をつかみ取るために模索していかなければならないことを示してくれる『マイル22』(2月23日[日・祝]深夜0:55 WOWOWシネマほか)をマリアージュ。
『ナチス第三の男』(2017)
フランスの権威ある文学賞、ゴンクール賞最優秀新人賞を受賞したローラン・ビネの小説『HHhH プラハ、1942年』の映画化。
38歳で暗殺されたナチス最高幹部ラインハルト・ハイドリヒ(ジェイソン・クラーク)が、ハインリヒ・ヒムラーに次ぐ実力者になっていくまでの過程と、彼を暗殺すべく送り込まれたチェコスロバキア亡命政府の若き軍人ヤン(ジャック・オコンネル)とヨゼフ(ジャック・レイナー)の勇姿を通し、過ちと向き合う心と責任を果たすことの価値を描いた作品です。
教科書で目にするような歴史的偉人たちのことを、僕たちはどこか別次元の存在のように感じてはいないだろうか。また、歴史的悪行や大虐殺などを行った人々に関していえば、同じ人間であるなどとは断じて思いたくもないし、理解もできない。
しかし、生まれた時代や国や状況が異なるだけで、偉人も悪人も僕たちも、皆同じ人間。ハイドリヒも、2人の若者も同じように泣き、笑い、怒り、喜び、誰かを愛するひとりの人間であったのだということを、この作品は強く実感させてくれるに違いない。
奇麗事かもしれないが、生まれながらの悪人なんていやしない。生きていく中で迫られる選択のひとつひとつがその人間の歩む道筋を、心の在り方を決めていく。