萩原健一没後1年を機に学ぶショーケン流「カッコ悪いカッコよさ」<ザテレビジョンシネマ部>
そのキャリアを俯瞰してみても、何かを失い、何かに挫折した男の役がやたら多いのには驚かされる。
横溝正史原作のまがまがしいミステリー『八つ墓村(1977)』では、萩原の演じる寺田辰弥は、物語の冒頭から既に家族を失っている。喪失感を抱え、自分探しのつもりでルーツをたどり、事件に巻き込まれていく。
坂本竜馬暗殺の実行犯、佐々木只三郎を演じた『竜馬を斬った男(1987)』(3月25日[水]夜11:15 WOWOWシネマ)では、許嫁を寝取られ、故郷の会津を離れ、特命を受け愛妻を残して京都に赴任…と散々な状態。
常に心ここにあらずで町をさまよい、やはり非業の結末を迎える。タイトル通り「竜馬を斬った男」としてしか歴史に名を残せなかったこの悲しい男を、萩原は「武者震いするほどやりたかった」と語っている。
古典落語「三年目」を下敷きにした人情喜劇『居酒屋ゆうれい(1994)』(3月26日[木]夜10:45 WOWOWシネマほか)でも、板前である主人公は冒頭で妻を亡くす。その妻が幽霊となって現れると腰を抜かし、四つんばいでオロオロする、ごく普通の男のカッコ悪さも好演、新境地を開いた。