映画通スピードワゴン小沢一敬が語るロマンティック・コメディ『ラブソングができるまで』<ザテレビジョンシネマ部>
──今回、小沢さんがシビれた名セリフは?
小沢「(メロディと歌詞)二つが合わさって“魔法”が生まれるの」
──偶然知り合ったアレックス(ヒュー・グラント)から新曲につける歌詞の作詞を頼まれたソフィー(ドリュー・バリモア)。アイデアが浮かばずに悩んでいるとき、アレックスから「気楽に言ってみて。たかが歌詞だ」と言われたソフィーが反論するセリフです。「メロディは第一印象よ。肉体的魅力やセックス。でも“相手の本当の姿を知ること”が歌詞よ。二つが合わさって“魔法”が生まれるの」と。
小沢「俺もまさに二つが合わさって魔法が生まれると思ってるんだけど、じゃあ、そこでさらに『歌詞とは何か?』ということを考えたときに、一つ感動した話があって。またTHE BLUE HEARTSの話になっちゃうんだけど」
──この連載では毎度おなじみ、甲本ヒロトとマーシー(真島昌利)のブルーハーツですね。
小沢「ブルーハーツは、ほとんどの曲をあの二人がそれぞれ分担して作ってたんだけど、どっちが作った曲も『歌詞がいい』って言われ続けてきたのね。で、そのことをある取材で聞かれた二人の言った答えが、『歌詞っていうのは指なんだよ』と」
──指とは?
小沢「例えば、月がきれいだと思って、それを歌にしようとしたとき、歌詞っていうのは、その月を指してる指なんだと。だから、『歌詞がいいですね』って言われるのは、『指がきれいですね』って言われてるようなもんだと。ヒロトさんは『僕らが本当に伝えたいのは、その指が指してる月のことなんだよ。だから歌詞だけ褒められても困るんだ』みたいなことを言ってて」
──なるほど~。ヒロトさんらしい言い回しの、いい話ですね。
小沢「めちゃくちゃいいよね。この話をしたかったんだ、ここで(笑)」
──この話をするために、今回の映画が選ばれたようなもんですね。
小沢「そうそう。ちょうどいいセリフが出てきたから。まさにメロディと歌詞が合わさったときに魔法は起きるよね、と」
──語るべきところがないと言いつつ、だいぶ語れる映画でしたね。
小沢「そうね。教訓は何もないと言ったけど、もしかしたら、この映画を観て『私も何かやらなきゃ』ってやる気になった女子もいただろうし。結局、どんな映画でも、人は何かを得るんだよ。どう受け止めるかは、その人次第だから。例えば、クレヨンしんちゃんの映画で救われた人だって、何人もいるはずでしょ。そう考えると、映画ってホントにすばらしいですね…(淀川長治調で)サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!(笑)」
──そんなオチでいいんですか?
小沢「もう、俺はヒロトとマーシーの話をできただけで、かなり満足してるから、大丈夫(笑)」
小沢一敬
愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。
取材・文=八木賢太郎