「何やかんや言いながら、吉本興業に対しては、みんな感謝の気持ちは持ってるんじゃないですかね」
――では、吉本興業という芸能プロダクションには、どんな面白さがあるのでしょうか。
東野幸治:駆け出しの頃、伝説の林正之助会長とお会いしたことが何度かあるんですね。ある年のお正月の特番で、吉本芸人がNGK(なんばグランド花月)に集まったとき、生放送が終わって舞台袖を見たら、正之助会長が立ってるんですよ。で、舞台上に芸人がずらっと並んでる中、正之助会長が上がってきて、お客さんにあいさつをされたんです。「どうも、私がキ〇ガイ病院の院長です」って(笑)。そのあいさつが、どの芸人のネタより一番ウケるわけですよ。ほんまに面白い会社やなって思いましたよね。
――昨年の、いわゆる“闇営業”問題を機に、吉本興業は今、変革の時を迎えていると思うのですが、東野さんは今、吉本興業に対してどんな思いを抱いていらっしゃいますか?
東野:う~ん、昔はもっとムチャクチャでしたからね…。例えば、芸人が不倫なんかしたら、今やったら大問題ですけど、一昔前は、大阪ローカルの番組で「こいつ、結婚してるのに浮気してますねん」とか、「おまえ、女おるんやろ?」とか、平気でしゃべってましたから。朝の情報番組で言うてましたからね、(小指を立てて)「おまえのコレ、元気か?」って(笑)。で、そんな話を、みんなニコニコしながら聞いてるっていう。ほんまに、芸人さんも昔は、女でヘタ打つ人もいれば、博打でヘタ打つ人もいて。それでも許される社会やったんですよね。
でも今はもう、そんなことはもちろん許されない。時代が変わったんやから、芸人も意識を変えてかなきゃいけない。…っていうことは、吉本興業という会社も、所属してる芸人もわかってるんです。ただ、頭ではわかっていても、変わりきれない部分もあったりして。僕からすると、そういうところがまた愛おしかったりするんですよ(笑)。
ただ、吉本興業という大きい器があるから、どんな芸人でも、なんとか生きていくことはできる、というのは間違いないと思います。中には会社に文句言うてる芸人もおるのかもわからんけど、何やかんや言いながら、吉本興業に対しては、みんな感謝の気持ちは持ってるんじゃないですかね。
東野幸治・著
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