樹木希林が教えてくれる、美しい作法と幸せな生き方『日日是好日』<ザテレビジョンシネマ部>
映画の成功にはいくつかの条件があって、例えば“キャスティングの妙”もそのひとつ。で、「原作付きの実写映画化」だと一段と、それが如実となる。
では、『日日是好日』(5月6日(水)夜9:00、WOWOWシネマ ※読み方は「にちにちこれこうじつ」)という作品の場合はどうだろう。
主人公を生き切ってみせた黒木華
原作は今なおロングセラーを記録中、「日日是好日-『お茶』が教えてくれた15のしあわせ‐」。エッセイストの森下典子が約25年間、通い続けた茶道教室での日々を滋味深くつづったものだ。
自伝的なエッセイであるから主人公の名も“典子”で、これを黒木華が演じている。まずこの配役がピッタリ! 本当にやりたいことを見つけられぬまま、漫然と大学生活を送っていた彼女が何となく茶道の世界へと足を踏み入れる20代、それから就職、失恋、大切な人の死…などを経験してゆく40代までをいみじくも生き切ってみせたのだ。
つまり、あくまでも茶道は映画の一要素であり、主眼は“人生の一コマ一コマ”を丁寧に描くこと。脚本を自ら手掛けた大森立嗣監督もこう述べている。「ひとりの女性が大人になっていく過程で、(略)胸の奥にずっと、でもひそかにある大切なものにお茶を通して気付き、触れていくお話」と。
茶道教室の先生役に樹木希林
さて――。ここでさらに重要となるのが典子の師、茶道教室の先生役である。「ただ者ではない」と噂される、その武田先生には樹木希林が。こちらも有無を言わさぬハマり具合で、「ただ者ではない」希林さんしか考えられないキャスティング。茶道の経験はなかったが、映画のために所作や手順を習い、身に付けて、着物姿もお似合いの、どこから眺めても和の神髄を極めた“お茶マスター”なのであった。